研究課題/領域番号 |
24591354
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
野牛 宏晃 自治医科大学, 医学部, 非常勤講師 (60348018)
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研究分担者 |
岡崎 啓明 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (80610211)
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キーワード | リポ蛋白リパーゼ / 肝臓 / 脂質代謝 |
研究概要 |
平成25年度は、肝臓特異的にリポ蛋白リパーゼを欠損させたマウス(L-LpLKOマウス)の肝臓での表現型について検討した。 L-LpLKOの肝臓ではLpL mRNAは67%~98%抑制されていたが、通常食飼育下では肝臓LpL活性は野生型と比べほぼ同等であった。そこでLXRアゴニストであるT0901317を全身投与し肝臓のlipogenesisを誘導した結果、野生型の肝臓でLpL活性は59.5%上昇を認めたがL-LpLKOマウスの肝臓では増加を認めず、野生型に比べL-LpLKOマウスの肝臓lpL活性は39%有意に抑制されていた。脂肪組織、骨格筋、心筋などのLpLを高発現する臓器におけるLpL活性は、野生型及びL-LpLKOマウス共にT0901317投与により影響を受けなかった。 通常食飼育下及びT0901317投与後において、血清LpL活性は野生型とL-LpLKOマウスで同等であることから、肝臓のLpL活性が血清LpL活性に影響する可能性は低いと考えられた。T0901317は肝臓のlipogenesisに加え、ABCA1誘導を介した血清HDL上昇作用を有することが知られている。T0901317投与により野生型では血清TG(VLDL-TG)の増加及びHDLの増加を認めたが、L-LpLKOマウスではより著明に血清TGが増加する一方で、HDLの低下を認めた。野生型とL-LpLKOマウスでは血清LpL活性、骨格筋、心筋、脂肪組織でのLpL活性に差がないことから、L-LpLKOマウスで認める高TG血症及びHDL増加の抑制は、肝臓局所のLpLが欠損することによりVLDL-TGの水解が抑制され、それに伴いHDL形成が抑制されている可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度におけるL-LpLKOマウスの作成及び血清脂質代謝の検討に引き続き、平成25年度は肝臓LpLの血清LpL活性への影響、薬物により脂肪肝を誘導した際の肝臓LpLの血清リポ蛋白代謝への影響について検討した。肝臓局所のLpLが血清LpL活性に影響しないにも関わらず、リポ蛋白代謝に重要であるという所見を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り、肝臓LpLは、血清LpL活性に影響しないにも関わらずVLDL中のTG水解を阻害し、それに伴うHDL形成を阻害している可能性がある。LpLは脂肪組織、筋肉で高発現し、それら臓器の毛細血管においてVLDL-TGを水解するものと考えられてきたが、今回得た結果は新たな知見と考えられる。さらにLpL欠損肝細胞の表面におけるTG水解抑制が、水解による脂肪酸産生を抑制しさらには肝細胞内への取り込みを抑制し、脂肪肝の形成にも関連している可能性がある。 T0901317により誘導されるVLDL分泌の亢進及び肝細胞表面のLpLによるTG水解が、脂肪肝の形成にどの程度関与しているのか、L-LpLKOマウスにおいて検討していく。細胞内の脂肪酸代謝関連酵素の発現を検討、肝細胞培養下におけるVLDL-TGの水解と産生された脂肪酸の細胞内への取り込みなどにより今後検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由として、使用するPCR試薬、酵素活性測定試薬、放射性試薬などが研究室に既存していたことから、当初の予定より研究費が抑制できたことによる。 放射性試薬、細胞培地、realtime PCRキット、プライマー作成、抗体、酵素活性測定試薬などに使用予定である。
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