研究課題
基盤研究(C)
本研究では、肝臓、膵臓、脂肪組織に高レベルの発現を示す膜タンパク質、betaKlothoに着目し、全く新しい脂質代謝制御メカニズムを明らかにすることを目的としてきた。平成24年度には、以下の3つの成果を挙げることができた。1、アルブミンプロモーターにより、肝細胞特異的にbetaKlothoを発現するトランスジェニックマウスラインを樹立し、全身のノックアウトマウスとの交配により、肝細胞におけるbetaKlotho発現をレスキューしたマウスの脂質代謝における表現型を高脂肪食、低脂肪食下において詳細に解析した。2、膵外分泌機能におけるFGF19‐betaKlothoシステムの意義について遺伝子改変動物を用いた解析を行うため、(ラットではなく)マウスにおける実験系を樹立し、実験を行った。3、脂肪組織ライセートを用いたメタボロミクス解析を行い、betaKlothoノックアウトマウスの脂肪組織では、アミノ酸含量の減少を認めることを明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
当初は、実験計画において中心的ではなかった、アルブミンプロモーターによる肝細胞特異的betaKlothoトランスジェニックマウスの樹立、betaKlothoノックアウトマウスとの交配が予定以上に進捗し、肝細胞におけるbetaKlothoの機能と肝細胞以外(膵外分泌細胞、脂肪細胞)のbetaKlotho発現部位における機能を峻別して評価することが可能となった。実際、平成24年度の研究成果により、肝細胞におけるbetaKlothoの機能は、従来より知られている胆汁酸代謝制御にとどまらず、低脂肪食環境下におけるコレステロール合成と脂肪酸・トリグリセライド合成のスイッチングに関与していることが明らかとなった。さらに、betaKlothoノックアウトマウスが示す、体重減少の表現型は、肝細胞におけるbetaKlotho発現の有無には依存しないことをin vivoで証明することに成功した。
平成24年度の成果として、肝臓におけるbetaKlotho発現をレスキューしたbetaKlothoノックアウトマウスが得られたことから、これを有効に活用することにより、膵外分泌機能と脂肪細胞におけるアミノ酸・脂質出納におけるbetaKlothoの意義を明らかにすることを目指す。特にマウス白色脂肪組織ライセートにおけるメタボロミクス解析では、解釈可能なアミノ酸代謝変化を検出することに成功したことから、さらに解析を進め、アミノ酸代謝制御を担う、mTOR経路やオートファジー活性を合わせて検討し、これら代謝動態を説明しうるbetaKlothoの分子機能の解明を目指す。
平成25年度には、特に膵外分泌機能に重点をおき、特にin vivoの膵液分泌応答性試験を集中的に行うことでFGF19‐betaKlothoシステムの意義を明らかにしたい。そのために、リコンビナントFGF15、FGF19、FGF21の購入、膵液のプロテオミクス解析のためのSDS-PAGEゲルや銀染色試薬、ノックアウトマウス等の繁殖維持経費、などが必要である。さらに蓄積する質量分析実験のデータの整理やとりまとめのための事務補佐員の人件費が必要である。また、脂肪組織のアミノ酸分析やmTOR等のシグナル伝達分子の解析のための試薬、抗体、メタボロミクス受託測定費等が必要となる。
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実験医学(羊土社)
巻: Vol.31 No.5(増刊) ページ: 76-82
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