研究課題
本研究は肝臓、脂肪組織、膵臓に発現する膜蛋白質、betaKlothoの生理的役割を統一的に理解することを目標としている。現在までに、(1)肝臓における、回腸由来ホルモンFGF15のシグナル受容を媒介することによる胆汁酸合成制御に関する作用、(2)脂肪組織における栄養素応答性に関する昨日、(3)膵液分泌における作用の一端をそれぞれ明らかにしつつある。平成25年度には、胆汁酸の合成・分泌が哺乳類における唯一のコレステロール排泄経路であることに着目し、betaKlotho遺伝子欠損マウス(KO)における胆汁酸合成亢進が血清脂質・リポタンパク質濃度に及ぼす影響を解析した。これにより、胆汁酸のプールサイズ、糞便中排泄量が各々約1.5倍、約2.5倍に増加しているKOの血清脂質濃度は対照マウスと比較して低下していること、この低下は特に低脂肪食下飼育において顕著であり、コレステロールよりもむしろトリグリセライドの低下が著明であることを明らかにした。さらにアルブミンプロモーターを用いて肝細胞特異的にbetaKlothoを発現したマウスの作製と解析を行い、上記作用はbetaKlothoの肝細胞特異的な機能であることを証明した。
1: 当初の計画以上に進展している
アルブミンプロモーターを用いて肝細胞特異的にbetaKlothoを発現したマウス(Tg)とbetaKlotho遺伝子欠損マウス(KO)の交配により得られるTg/KOを用いて、betaKlotho作用の肝臓における組織特異性を証明することができた。また脂質合成酵素やその転写制御因子の遺伝子発現解析に加えて、14C放射性同位体ラベル酢酸の遺伝子改変マウスへの投与とin vivoフラックス解析を行うことにより、アセチルCoAのコレステロールと脂肪酸・トリグリセライドへの分配比率をメタボライトのフラックスの次元で明らかにすることができたこと。
平成26年度には、特に脂肪細胞の栄養素出納についてトレーサー実験、栄養素センサー分子(mTORやAktシグナルなど)のウエスタンブロット解析、組織ホモジェネート中の栄養素濃度測定(メタボロミクス解析)実験、組織切片を用いたイメージング解析などを用いて推進し、betaKlothoの予期しない全く新しい細胞生理学的機能を解明し、メタボリックシンドローム等の病態における病態生理的意義を明らかにする。
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