研究課題/領域番号 |
24591356
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
内田 克哉 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (40344709)
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研究分担者 |
小林 健一 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, 健康障害予防研究グループ, 主任研究員 (00332396)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 甲状腺ホルモン / GABA / パルブアルブミン / 海馬 / 発達障害 / 大脳皮質 |
研究実績の概要 |
E17.5からP14の脳発達期に人為的な甲状腺ホルモン不全を誘導するとマウスの大脳皮質および海馬におけるパルブアルブミン(PV)陽性細胞は顕著な減少を示すことを免疫組織学的に明らかにした。また、外因性に甲状腺ホルモンを補充することでPV細胞数は対照群の同様のレベルまで回復することから、甲状腺ホルモン依存的な現象であると推察された。PVニューロンは視床網様核や小脳プルキンエ細胞にも豊富に存在するため,in situ hybridization法を用いて甲状腺ホルモン不全時のPV遺伝子発現レベルを組織学的に観察した。その結果、甲状腺ホルモンの有無によって発現変動が観察される領域は大脳皮質と海馬歯状回に限定的で、海馬アンモン核周囲や視床網様核そして小脳プルキンエ細胞のPV発現は甲状腺ホルモン量に影響されないことが明らかになった。このようにして、脳発達期に甲状腺ホルモンの作用を人為的に失わせた個体はPVの遺伝子ならびにタンパク質発現レベルの低下が観察されたが、P14以降抗甲状腺剤を中止し、甲状腺機能を回復させると成熟個体ではPV発現が対照群と同程度に観察された。この結果は、甲状腺ホルモンの欠如がPV発現を遅延させたことを示唆する。先天性の甲状腺ホルモン不全は臨床的にクレチン症として知られており、重篤な知能障害を引き起こす。動物実験においても、脳発達期に甲状腺ホルモン不全を誘導すると海馬機能に支障をきたすことが報告されており、ヒトの臨床所見と極めて類似する。我々は、一時的なPV発現遅延が神経回路構築に何らかの影響をもたらすと考え、まずはスクリーニング的な意味合いで、12時間ごとの明暗周期下で、自発運動量の計測を行った。その結果、正常個体で観察される活動開始時と終了時の活動亢進が失われ、かつ、明期の活動量が極端に低下することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
妊娠マウス(親)に抗甲状腺剤を投与して、甲状腺ホルモン不全動物を作成するが、出生後に食殺等によって、十分な個体数を得られないため、当初の実験計画よりわずかに遅れている
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今後の研究の推進方策 |
次年度使用額は、当初計画していた分子組織学実験の一部が次年度に延期することによって生じたものであり、延期した分子組織学実験に必要な経費として平成27年度請求額とあわせて使用する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
妊娠マウス(親)に抗甲状腺剤を投与して、甲状腺ホルモン不全動物を作成するが、出生後に食殺等によって、十分な個体数を得られないため、当初の実験計画よりわずかに遅れている。
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次年度使用額の使用計画 |
分子組織学実験の一部を次年度に行うことと、成果発表の経費に充てることを考えている。
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