研究課題
1.リンパ球性漏斗下垂体後葉炎モデルの作成:作成したリコンビナント76kD蛋白を、結核菌の菌体成分を加えたcomplete Freund’s adjuvant (CFA)を混合したエマルジョンを作成し、SJL/Jマウスに投与し76kD蛋白免疫動物を作成した。マウス下垂体組織の病理学的検討で、CD3、CD45R陽性のリンパ球、炎症性細胞の浸潤が認められた。また、76kD蛋白で免疫した動物の脾臓から取り出したB細胞とミエローマ細胞を融合させた抗体産生B細胞ハイブリドーマを作出し、培養上清に分泌させた抗体を精製してモノクローナル抗体を得た。2. マウスES細胞よりES-AVP細胞を含む視床下部前駆細胞を選択的に分化誘導し、分散培養も行った。具体的には、ES細胞を分散しembryoid body-like aggregate(胚様体凝集体)を形成させ、無血清培地で浮遊培養し大脳細胞を分化誘導し再凝集過程を急速に行い(SFEBq法)、さらにインスリンなどの増殖因子を除いた培地(growth factor-free chmically defined medium ; gfCDM)を使用することで分化誘導した。このES-AVP細胞培養系で、遺伝子導入によるsiRNAによるノックダウン実験に成功し、76kD蛋白ノックダウンのAVP分泌に対する有意な結果を得た。さらにES-AVP細胞でのAVP小胞に蛍光タンパク質を融合させ、time lapseイメージングでAVP小胞の可視化に成功した。また、全反射蛍光顕微鏡を用いた開口放出解析も可能になった。
2: おおむね順調に進展している
目標であった、76kD蛋白免疫によってリンパ球性下垂体炎を作成することに成功した。下垂体腫大、リンパ球浸潤が認めれらた。これはヒトのリンパ球性下垂体炎で見られる所見と同様の所見である。この結果より、76kD蛋白がLINHの病態に関与する可能性が考えられた。また、マウスESから分化誘導したAVP細胞培養系において、76kD蛋白がAVP分泌に関与する新たな知見を得た。蛍光蛋白をAVPに融合した発現系において、time-lapse imagingによって76kD蛋白がAVP分泌顆粒の輸送、開口放出に関わっていることを示す所見を得た。
76kD蛋白免疫によるリンパ球性下垂体炎の解析をさらにすすめるために、免疫する76kD蛋白の量、CFAの量など、条件を検討する。リンパ球性下垂体炎の液性免疫機序について検討するため、76kD蛋白モノクローナル抗体をマウスに移入して下垂体炎の評価をする。ES-AVP細胞培養系において、siRNAによるノックダウン実験に成功し、76kD蛋白ノックダウンのAVP分泌に対する有意な結果を得たが、今後rescue実験を行いoff-targetになっていないか、また76kD蛋白と蛋白-蛋白相互作用して開口放出に関与する分子の同定とその機序について検討する。
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