研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、劇症1型糖尿病において、1)ウイルス感染下流に位置し、β細胞に発現する蛋白X、2)患者免疫担当細胞で発現が低下する蛋白Yのβ細胞傷害における意義を明らかにすることである。1)蛋白 Xの検討 マウス膵β細胞株MIN6細胞では、IFNα添加前は蛋白Xの発現をほとんど認めなかったが、IFNα添加により蛋白Xの発現が用量依存的に増加した。このことはRT-PCRにおいても、ウエスタンブロット法においても確認された。同様に、マウス単離膵島におけるRT-PCRによる検討でも、IFNα添加により蛋白Xの発現上昇を認めた。 次に、アデノウイルスベクターにマウス蛋白Xをコードする遺伝子を組み込み、蛋白Xを発現させるベクターを作成し、MIN6細胞に蛋白Xの発現を誘導した。この細胞に、IFNγ+IL-1βを作用させ、Caspase3/7活性とFACSによるアネキシンV陽性、PI陰性細胞を測定したところ、アポトーシスが減少することが明らかになった。また、アテノウイルスベクターにSiRNAを組み込み、蛋白Xをノックダウンさせるベクターを作成、MIN6細胞にインターフェロンαを用いて、蛋白Xの発現を誘導し、このベクターを作用させ、IFNγ+IL-1βによるアポトーシスについて検討したところ、アポトーシスが増加することが明らかになった。以上の結果から、蛋白Xは細胞障害性サイトカインによるβ細胞のアポトーシスに対し、保護的に作用する可能性が示された。2)蛋白Yの検討 モデルマウスを用いた蛋白Y発現/機能解析の予備研究として、ヒトおよびマウス末梢血免疫担当細胞をFACSにより分類し、発現細胞を検討した。その結果、蛋白Yは主にCD3陰性CD56陽性でソーティングされたNK細胞に発現していることが明らかになった。また、ヒト膵組織における免疫組織学的検討を開始した。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度の計画では、1)蛋白Xの発現誘導の検討、2)蛋白X過剰発現系を用いた機能解析、3)蛋白X発現抑制系を用いた機能解析、4)蛋白Xの血中濃度測定系の樹立、5)モデルマウスおよびヒト膵組織での蛋白Y発現/機能解析を行う予定であった。このうち、1)~3)については本年度に達成され、4)については測定キットが他施設で開発されたのでそれについて検証を行っている。5)については、モデル動物での検討は達成されていないが、後の分析を効率よく行うために、対象をヒト末梢血とした解析が進展している。以上のように本研究はおおむね順調に進展している。
当初の計画に従い、平成25年度は、1)蛋白X過剰発現系を用いた機能解析、2)蛋白Xを過剰発現させたモデルマウスの作成と解析を行う予定である。また、前年度より進行中の、3)蛋白Xの血中濃度測定については、前年度に引き続いて測定キットの検証を行い、 信頼性が確認されれば、患者およびコントロールにおける血中濃度を測定する。また、当初の計画では、モデルマウスにおける蛋白Y投与効果の検討する予定であったが、前年度の研究の結果、蛋白Yは主にCD3陰性CD56陽性で分画されたNK細胞に発現していることが明らかになった。NK細胞は膵組織への浸潤を認めないことから、その機能低下が劇症1型糖尿病発症に関連していることが予想される。したがって、当初の計画を一部変更し、まずヒト末梢血NK細胞において蛋白Yに関連して発現増強及び低下が予想される分子の発現を検討する。
マウス購入/飼育費、細胞培養に関する費用、蛋白X測定キット購入費、FACSおよび免疫組織化学に使用する抗体、遺伝子発現量測定のためのキットの購入など、計画にしたがって研究費を使用する。
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