研究課題
本研究の目的は、劇症1型糖尿病において、1)ウイルス感染下流に位置する蛋白X(=ISG15)、2)患者免疫担当細胞で発現が低下する蛋白Y(=KLRC3)のβ細胞傷害における意義を明らかにすることである。1)ISG15の検討膵β細胞株MIN6を用いて、IFNα添加によりISG15の発現が用量依存的に増加すること、ISG15を強制発現させると炎症性サイトカインによるアポトーシスが減少し、ノックダウンさせると増加することを明らかにした。すなわち、ISG15はMIN6細胞において抗アポトーシス作用を有することが明らかになり、治療応用への可能性が示された。 さらに本年度は、ウイルス側の環境をよりヒト劇症1型糖尿病に近似したものとするため、ポリイノシンポリシチジン酸(PIC)をMIN6細胞に導入する系を構築した。その結果、IFNα/βおよびISG15mRNA発現上昇、TUNEL陽性細胞数の増加等によりアポトーシスの亢進を明らかになった(投稿準備中)。 次に、host 側の環境を近似させるため、ヒトiPS細胞株よりβ細胞を分化誘導し用いる系を構築した。具体的には、SOX17陽性内胚葉細胞、PDX1陽性膵前駆細胞を経て、インスリン陽性細胞を誘導する3段階の誘導法によりインスリン産生細胞を分化誘導しえた。2)KLRC3の検討NK細胞におけるmRNA発現量の検討から、劇症1型糖尿病では、1)KLRC3およびheterodimerを形成するCD94の発現が有意に低下、3)KLRCファミリーのKLRC1やNKG2Dの発現は有意差がない、などを明らかした。また、末梢血単核球中のNK細胞の割合と先行感染から膵β細胞の破壊までの期間が短さの関連を明らかにした。以上より、劇症1型糖尿病においてKLRC3の発現低下によりウイルス感染に対する免疫反応の異常を介して、発症に関与することが示唆された。
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医学のあゆみ
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Endocr J.
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http://dx.doi.org/10.1507/endocrj.EJ14-0219