研究課題/領域番号 |
24591364
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
大塚 文男 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40362967)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 卵巣 / 生殖内分泌 / BMP / ステロイド合成 |
研究概要 |
今年度の研究では、卵母細胞とBMPを取り巻く、卵胞内のcell-to-cell communicationの分子メカニズムの解明と、これに寄与する新規卵母細胞因子を探索した。卵胞BMPシステムは、FSHの刺激下で卵母細胞を中心に卵胞を構成する細胞間を取り巻き、autocrine/paracrine機序により卵胞の正常な発育・ステロイド合成を調節する細胞間コミュニケーターである。さらに、BMPから顆粒膜細胞へのFSH-Rシグナル制御の一方で、FSH自体も顆粒膜細胞のBMPR-Smadシグナルを増幅する相互作用が存在するという我々の知見に基づき、未だ情報の乏しい卵母細胞とBMPシステムの関連に注目して研究を進めた。これまでの研究の中で、卵母細胞とestrogenによる顆粒膜細胞FSH-Rシグナルの増幅メカニズムに着目して研究を進めたところ、卵母細胞とestrogenの共存下において顆粒膜細胞のFSH-R脱感作機構であるGPCR kinases(GRK)/β-arrestinが負に制御されることが認められた。このGRK/arrestinファミリー分子が、FSH-Rシグナルの増幅因子として機能していることを仮定し、卵巣顆粒膜細胞に発現するGRK-2,-5,-6およびβarrestin-1,2の機能がFSH-R活性の多寡に関与する可能性に着目して検討を行った。GRK-siRNA, GRK-dominant negativeを用いたFSH-R機能の変化とBMP作用との関連を探索することにより、卵母細胞―顆粒膜細胞間の連携によるFSH-Rシグナル増幅およびaromataseの発現・活性の機序に、FSH受容体脱感作因子GRK分子のdownregulationが関与することが新たに示された。次年度は、この研究結果を活かしてさらに、この分子メカニズムの詳細を探索したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これに関与する論文が掲載決定となった。とくに、卵母細胞とestrogenの共存下において顆粒膜細胞のFSH-R脱感作機構であるGPCR kinases(GRK)/β-arrestinが負に制御されることが発見され、GRK/arrestinファミリー分子が、FSH-Rシグナルの増幅因子として機能していることが新たに注目される内容であった。GRK-siRNA, GRK-dominant negativeを用いた研究から、卵母細胞―顆粒膜細胞間の連携によるFSH-Rシグナル増幅およびaromataseの発現・活性の機序に、FSH受容体脱感作因子GRK分子のdownregulationが関与することが新たに示さ、この結果を論文発表することができた。今後、次年度の研究において、この分子機序の詳細についても検討を進めていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在の基礎研究を、継続して進めていく。次年度は、卵母細胞転写因子Foxo3aにも着目して研究を進めたい。Foxo3a過剰発現による卵胞BMPシステム発現への影響、ステロイド合成系・細胞分裂周期の変化を検討し、種々のmutant-Foxo3a導入によるFoxo3a活性調節下でBMP-15/BMP受容体の発現・機能の変化を決定したい。さらに我々が提唱した顆粒膜細胞Kit ligand(KL)/卵母細胞c-kitとBMP-15による細胞間feedback loopの中で、顆粒膜細胞の増殖に寄与するKL誘導性の卵母細胞因子を特定したい。また、BMPは視床下部―下垂体におけるGnRH-LH/FSH分泌制御にも直接関与するため、これらの変異配列を視床下部GT1-7・ゴナドトロープLβT2細胞に導入してGnRH-LH/FSH分泌軸の動態変化を評価し、BMP変異によるH-P-O系全体への影響を検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
一部、研究室移転のための備品として使用する可能性もある。実験室の移転のため、使用が若干遅れたため、3万円程度の残金が出たが、今年からは、この分を含めて研究材料費として使用する予定である。使用品目としては、実験用動物(SDラット)、プラスチック類(ディッシュ・プレート・チューブ)、核酸実験試薬(酵素・DNAオリゴ・siRNA)、蛋白実験試薬(抗体・酵素類)、培養試薬(培地・血清など)および恒温水槽などを予定としている。
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