研究課題/領域番号 |
24591364
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
大塚 文男 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40362967)
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キーワード | 卵巣 / 生殖内分泌 / BMP / ステロイド合成 |
研究概要 |
前年度からの継続部分として、卵母細胞とestrogenによる顆粒膜細胞FSH-Rシグナルの増幅メカニズムを解明するために、顆粒膜細胞のFSH-R脱感作機構であるGRKとFSH-Rシグナル増幅の機序を探索した。estrogenの存在下・非存在下で培養した卵母細胞とstage-matchした顆粒膜細胞と共培養し、BMPの存在下で顆粒膜細胞のFSH-R活性を検討し、卵母細胞・顆粒膜細胞間の連携によるFSH-R作用増幅におけるBMPの新たな側面が見出された。さらに、卵胞機能の保持に寄与するメラトニン分子にも注目してBMP機能との連関を検討したところ、BMP-6に代表されるFSHによるprogesterone分泌抑制に対して、MT1シグナルが拮抗することが新たに示された。PCOSにおいて、BMP-6発現の増加が認められる報告を考慮しても、BMPシグナルとMT1シグナルの拮抗作用の意義を追求すべきと考えられた。他方、BMPは視床下部―下垂体におけるGnRH-LH/FSH分泌制御にも直接関与するため、視床下部GT1-7・ゴナドトロープ細胞においても、BMP作用の影響をGnRH-LH/FSH分泌軸H-P-Oへの影響を検討した。BMP-4がkisspeptin作用を抑制しながら、estrogenによるGnRH制御シグナルの調節に寄与する新たな機序が示された。現在卵母細胞転写因子Foxo分子にも着目してBMPの発現調節機序を検討している。Foxo3aはPI3Kの下流に位置する転写因子で、原始卵胞から初期卵胞まで卵母細胞核内に発現し、卵胞成長に抑制的に作動し、卵母細胞BMP-15の発現を減弱する。Foxo発現変化によるBMPの発現とステロイド合成への影響を評価し、卵母細胞より分泌されるBMPを診断ツールとして利用することを目指してさらに研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究内容の一部は論文発表でき、一部は修正投稿中の状態である。特に、研究の経過中に見出されたメラトニン作用とBMP機能との関連として、メラトニンは卵胞顆粒膜細胞でのBMP作用に拮抗してプロゲステロン合成維持に寄与する新たな作用機転が示さたことから、新たな視点として今後の研究に活用したい。また、中枢性神経内分泌として、GnRHの分泌変動と時計遺伝子の関与として、Kisspeptin・BMP-4・Melatoninによる時計遺伝子とGnRHの発現の変化、そのEstrogenによる影響についても新たな展開が見出され、次年度の研究にも取り入れたい。
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今後の研究の推進方策 |
次段階では、卵母細胞より分泌されるBMPを卵母細胞機能の診断ツールとして利用することを目指す。臨床応用を展望にmature proteinおよびproproteinのドメインに特異的な抗体を作成してBMPのELISA/RIA系を確立し、卵巣機能不全モデルにおけるBMP分泌レベルの変化を明らかにする。また近年報告された循環血中に存在するBMP-9 を対照とし、BMPレベルの相対的な変化に着目して評価する。また、BMP成熟ドメインの分泌に必要なprotein processing・糖化・リン酸化修飾についても、proprotein-BMP発現プラスミドをラット卵母細胞に導入して検討したい。さらに、今年度新たに得られた前項の知見・応用性を次年度の研究展開にも活用し、GnRH-LH/FSH分泌軸、H-P-O系全体への影響を検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験室の改修・移転のため、消耗品の使用・購入に若干遅れが生じ、残金が生じた。しかし、今年度は、この分を含めて研究材料費として併せて使用する計画である。 今年度の使用品目としては、実験用動物(SDラット)、プラスチック類(ディッシュ・プレート・チューブ)、核酸実験試薬(酵素・DNAオリゴ・siRNA)、蛋白実験試薬(抗体・酵素類)、培養試薬(培地・血清など)などを追加購入の予定としている。
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