研究課題/領域番号 |
24591366
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
岩崎 泰正 高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (30303613)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 副甲状腺ホルモン / カルシウム / 骨粗鬆症 |
研究概要 |
GCMB 新規変異の同定した原発性副甲状腺機能低下症の1例において、以下の検討を行った(慶應義塾大学医学部小児科との共同研究内容を含む)。 【背景】原発性副甲状腺機能低下症の分子遺伝学的異常に22q11.2欠失が筆頭に挙げられるが、それ以外はほとんど不明である。今回、原発性副甲状腺機能低下症の症例から GCMB 新規変異を同定し、機能解析を行った。【目的】原発性副甲状腺機能低下症における遺伝子異常を探索し、同定した新規変異の機能を評価する【症例】現在9歳女児。7歳時に無熱性けいれんで発症し、精査の結果、原発性副甲状腺機能低下症と診断した。副甲状腺以外の異常は認めなかった。【方法】22q11.2 欠失をFISH法またはアレイ CGH で否定し、PCR-direct sequence 法を用いて GCMB の全翻訳領域を解析した。同定した新規変異の機能は以下のように評価した。PT-r 細胞(ラット副甲状腺上皮細胞、内因性 GCMB 発現なし)を用いて一過性強制発現系により、PTHプロモーター領域(-2000/+5)をレポーターとした転写活性化能解析(Luciferase reporter assay)を行った。【結果】 GCMB 新規変異2つ(R367fs、 T370M)を複合ヘテロ接合性に同定した。GCMB 新規変異R367fs、T370M の機能解析では転写活性能低下を認めた。現在、Western Blot による蛋白発現量解析、EBFPタグ法による細胞内局在、ゲルシフト法による DNA 結合能を解析中である。 上記の結果は、ヒトにおいても GCMB が PTH 遺伝子の発現に重要な役割を果たしている可能性を示唆する重要な知見と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際の症例の遺伝子解析により、遺伝性副甲状腺機能低下症患者のゲノムにおいて転写因子 Glial Cell Missing B (GCMB) の遺伝子変異(R367fs、 T370M)を見い出し、かつこの変異を有する GCMB が PTH 遺伝子の発現誘導能を欠くことを、in vitro の解析により確認した。以上の検討結果は、従来より私どもが提唱してきた仮説、すなわち GCMB が PTH 遺伝子の発現に必須であることを、臨床的に裏付けるものであり、重要な研究成果であると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
私どもは、過去の研究、および昨年度の研究において、転写因子 GCMB が in vitro の系において PTH 遺伝子の組織特異的発現を規定する重要な因子である可能性を報告してきた。また昨年度の研究で、実際の症例において GCMB の遺伝子変異が遺伝性副甲状腺機能低下症の原因となることを見出し、ヒトにおける GCMB と PTH 遺伝子発現との関連も裏付けられた。以上の結果を踏まえ、本年度はラット副甲状腺細胞株 (PT-r) を用いて、以下の検討を予定している。 1) GCMB は PTH 遺伝子の発現を許容する上で重要な役割を果たしていると考えられる。しかし PTH 遺伝子発現の短期的な ON/OFF 調節は、別の因子により行われている可能性が高い。私どもは副甲状腺組織に発現している転写因子 Sp6 (epiprofin) の結合配列が PTH 遺伝子プロモーター上に存在することを確認した。この 結合配列の意義を明らかにするため、変異解析 (deletion mutants, site-directed mutagenesis) 手法を用いた検討を行う。 2) 細胞内カルシウムの変化(低下および上昇)が Sp6 自体の発現に及ぼす効果を、Sp6 遺伝子転写調節領域のクローニングおよび転写調節を解析することにより明らかにする。 3) Sp6 がどのような機序で、PTH 遺伝子の転写にいかなる影響を及ぼすかを解析する。 以上の検討結果を通じて、副甲状腺細胞でカルシウムによる PTH 遺伝子発現の制御機構を明らかにする。 以上の検討で得られる研究成果は、本研究の最終的な目標である、PTH 遺伝子発現の人為的制御に向けた基盤的な知見となることが期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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