研究課題/領域番号 |
24591367
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
河手 久弥 九州大学, 大学病院, 助教 (20336027)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ステロイドホルモン / 核内受容体 |
研究概要 |
1. 分子モータータンパク質であるミオシン(ミオシンV, VI, VIII)およびダイニンのクローニングを行った。各種タンパク質に対するプライマーを作成し、ヒト培養細胞株から単離したmRNAをテンプレートとして、RT-PCRを行い、GFP, CFPなどの蛍光タンパク質との融合遺伝子の作成を行った。現在、これらのタンパク質の細胞内局在の解析を進めている。 2. 骨粗鬆症治療薬として用いられている新規SERMであるバゼドキシフェン(BZA)が、細胞内のエストロゲン受容体(ER)の局在にどのように影響するかを解析した。以前の我々の報告では、SERMであるラロキシフェン(RLX)処理で、ERは核小体に移行する現象を認めたが、構造の類似したBZAでは、ERの核小体への移行はほとんど認められず、核質に留まっていた。ERを介する転写活性化は、RLXとBZAによって強く抑制されることから、異なる分子メカニズムでERの転写活性化抑制に関与していることが示唆された。 3. グルココルチコイドは、数多くの疾患に対する治療薬として用いられているが、副作用も多く、特に糖尿病はしばしば認められる。ステロイド糖尿病発症の分子メカニズムを明らかにするために、グルココルチコイドで処理した脂肪前駆細胞におけるインスリン抵抗性関連遺伝子の発現について、リアルタイムPCRで解析した。今回、2種類のインスリン抵抗性関連遺伝子の発現が、グルココルチコイド投与で上昇することが明らかになり、また、糖尿病治療薬であるGLP-1アナログの投与で、これらの遺伝子の発現誘導がキャンセルされることを示した。今後はさらに詳細な分子メカニズムに関して解析を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、分子モータータンパク質であるミオシン(ミオシンV, VI, VIII)およびダイニンのクローニングを行い、GFP, CFPなどの蛍光タンパク質との融合遺伝子の作成した。現在、これらの発現プラスミドを培養細胞に導入して、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、これらのタンパク質とステロイドホルモン受容体の細胞内局在の解析を進めている。平成24年度で実験に用いる材料は、ほぼ揃ったので、条件検討を行いながら、ステロイドホルモン受容体の転写活性化機構への、分子モータータンパク質の関与について詳細に検討する。
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今後の研究の推進方策 |
1. 分子モータータンパク質の、ステロイドホルモン受容体を介する転写活性化能への影響を調べるために、各種ステロイドホルモンの応答配列の下流にルシフェラーゼ遺伝子をつないだレポータープラスミドを用いて解析する。各種ステロイドホルモン受容体を介する転写活性化能と、細胞内動態の関連について詳細な解析を行う。 2. ステロイドホルモン受容体の細胞内での移行に関しては、熱ショックタンパク質が重要な役割を果たしていることが報告されている。リガンド処理後の、ステロイドホルモン受容体、熱ショックタンパク質、細胞骨格タンパク質の相互作用に関して、免疫染色や蛍光タンパク質を用いた画像解析と、分子間相互作用に関する生化学的解析とを行う。 3. 分子モータータンパク質を過剰発現させた細胞と、siRNAを用いてノックダウンした細胞を用いて、ステロイドホルモン受容体の細胞内動態への影響や、細胞増殖能に対する影響を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度と同様に、次年度も実験に用いる消耗品を中心に使用する予定である。具体的には、プラスミドDNAを培養細胞に導入する際に使用するトランスフェクション試薬、ステロイドホルモン受容体を介する転写活性化能を測定するためのルシフェラーゼアッセイ用の試薬、免疫染色、免疫沈降、ウエスタンブロッティングに用いる各種抗体(細胞骨格タンパク質、熱ショックタンパク質など)、分子モータータンパク質や熱ショックタンパク質に対する阻害薬などを購入する。また、研究成果を発表するための学会出張旅費の使用も予定している。
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