研究概要 |
1. ヒト脂肪前駆細胞より、RNAを調製し、RT-PCRで分子モータータンパク質のミオシン(ミオシンV, VI, VIII)およびダイニンのcDNAを合成し、GFP関連タンパク質との融合タンパク質の作成を目的として、発現ベクターへのサブクローニングを行った。現在、共焦点レーザー顕微鏡による細胞内局在の観察を行っている。 2. 現在、臨床応用されている3種類の選択的エストロゲン受容体モデュレーター(SERM)の中で、ラロキシフェン(RLX)は乳癌細胞株において、エストロゲン受容体(ER)を核小体に移行させたが、タモキシフェン(TMX)とバゼドキシフェン(BZA)処理では、ERは核質に留まっていた。乳癌以外の細胞株では、SERMによる核小体移行はほとんど見られなかった。しかしながら、ERを介する転写活性化は、これらSERMによって著明に抑制された。一方、骨芽細胞様細胞株MC3T3-C1細胞において、Runx2はオステオカルシンプロモーターの転写を促進するが、エストロゲンおよびTMX処理では、Runx2による転写促進がさらに増強されたが、RLXおよびBZA処理では、Runx2によるオステオカルシンプロモーターの転写促進が著明に抑制された。RLXおよびBZAは、破骨細胞に対してだけでなく、骨芽細胞にも作用して、骨代謝を低下させることが示唆された。 3. グルココルチコイド(GC)によるインスリン抵抗性惹起のメカニズムを解明するために、ヒト脂肪前駆細胞を用いて解析を行った。GC処理で、TXNIP遺伝子の発現上昇を認めた。細胞によるグルコースの取り込みは、GCによって阻害されるが、TXNIPをノックダウンすると、GCによるグルコース取り込み阻害が解除されることから、TXNIPが脂肪前駆細胞でのGCによるグルコースの取り込み阻害において重要であることが示唆された。
|