研究課題
基盤研究(C)
① 野生型マウスにおける免疫寛容・KOマウスにおける免疫寛容破綻の機序解明:①-1:末梢性寛容の関与-野生型マウスを免疫する際、免疫を末梢で負に制御する細胞群、蛋白に対する抗体(抗CD25、CTLA4、PD-L1)を投与し、寛容が破綻できるか否か見当したところ、抗TSH受容体抗体の産生が見られたが、甲状腺ホルモンの上昇は認められなかった。つまり寛容の一部破綻を誘導できたが、疾患発症に至るほどの程度ではなかった。①-2:中枢性寛容の関与-野生型・KOマウスの胸腺をヌードマウスに腎被膜下移植してヌードマウスのT細胞を教育し、免疫した。胸腺におけるTSHR発現が中枢性寛容に重要であるという我々の仮説が正しければ、野生型マウスの胸腺移植ではヌードマウスのTSHR特異的T細胞が正常胸腺で除去され、抗体は産生されずバセドウ病は発症しない。 一方、KOマウスの胸腺移植ではヌードマウスのTSHR特異的T細胞は胸腺で除去されず、抗体産生/バセドウ病発症がみられる。現在まで胸腺移植約4~6か月後にヌードマウス末梢血にリンパ球の増加が認められることを確認した。このマウスを用いて免疫を行っている最中である。② 養子移入後の経時的な免疫反応の変化:免疫KOマウス脾細胞のヌードマウスへの養子免疫モデルは、長期にわたる抗TSHR産生を可能にしたが、同時にTSAb/バセドウ病は一時的で徐々にTBAb/甲状腺機能低下へ移行するということも明らかとなった。この変化の原因を明らかにするために、養子免疫後の免疫反応の経時的変化を検討した。バセドウ病が長期持続した群と機能低下へ変化した群での(i) T cell recall assay、(ii) ELISA による血中・甲状腺内・脾臓内サイトカイン発現、(iii) ELISAによるIgGサブクラスの変化には現在まで差異は認められていない。
3: やや遅れている
24年度は、①-1:末梢性寛容抑制による抗TSH受容体反応の検討と②:養子移入後の経時的な免疫反応の変化に関しては、予定通り研究が進行し、データも順調に得られている。しかし①-2:中枢性寛容抑制による抗TSH受容体反応の検討に関しては、胸腺移植後のヌードマウスにおける末梢リンパ球数の増加に予想(1~2か月)よりはるかに長い期間(4~6か月)が必要であることが判明し、年度内に予定まで進行しなかった。しかし長期間後といえ、胸腺移植後の末梢リンパ球増加は確実に認められたので、今後の進展が期待される。
①-1に関しては、末梢性寛容の破綻が不十分だったので、さらに抗体の種類を増やして、検討する。免疫を刺激するCD40抗体とCD137抗体の使用を計画している。①-2は胸腺移植後のリンパ球の回復に関する基礎検討がうまくいったので、リンパ球回復マウスでの免疫実験に進む。すなわちマウスをマウスTSH受容体発現アデノウイルスで3週間隔で2回免疫し、その2週後に採血し、抗TSH受容体抗体と甲状腺ホルモンを測定する。さらにと6週後にも採血と抗体価・ホルモン測定を行い、かつ甲状腺組織を摘出し、病理学的検討に供する。②は順調に進んでいるので、さらに観察期間の延長とマウス数増加で同様の検討を続ける予定である。
① 免疫寛容・寛容破綻の機序解明:①-1:野生型マウスから胸腺を摘出し、KOマウスの胸腺を腎被膜下に移植する。放射線照射にて骨髄を破壊し、野生型マウスの骨髄細胞を移植する。胸腺におけるTSHR発現が中枢性寛容に重要であるという我々の仮説が正しければ、野生型マウスのTSHR特異的T細胞が除去されず、免疫により野生型マウスに抗体産生/バセドウ病発症が見られるはずである。①-2:KOマウスから胸腺を摘出し、野生型マウスの胸腺を腎被膜下に移植する。放射線照射にて骨髄を破壊し、KOマウスの骨髄細胞を移植する。胸腺におけるTSHR発現が中枢性寛容に重要であるという我々の仮説が正しければ、KOマウスが持つTSHR特異的T細胞が正常胸腺によって除去されるので、免疫してもKOマウスに抗体産生/バセドウ病発症が認められないはずである。② 養子移入モデルにおける免疫反応の変化を外部からのコントロールの試み:得られるであろう結果に基づいて、変化の見られた免疫学的指標を参考に、人為的に抗TSHR免疫反応をコントロールし、TSAb→TBAbの変化を阻止する、或いは促進することを試みる。バセドウ病新規治療法開発に結び付く重要な実験と位置付けられる。
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