研究課題/領域番号 |
24591371
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
尾崎 敬 和歌山県立医科大学, 医学部, 非常勤講師 (40351390)
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研究分担者 |
村垣 泰光 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (40190904)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 甲状腺 |
研究概要 |
① マウス甲状腺切除術を施行後,残存甲状腺を1週間~2週間後に取り出しHematoxylin-eosin染色(HE染色)で検索した結果,特定の領域で甲状腺再生を確認した.さらに甲状腺再生部で,幼若な淡明細胞が多数出現することが判明した.② 再生部位における免疫組織化学的検討により,組織幹細胞に関連するCK14陽性細胞・Foxa2陽性細胞が再生中心部に存在することを確認した.③ 電子顕微鏡的観察により,甲状腺再生には幼若な細胞の出現と細胞死により甲状腺濾胞が形成されることも確認した.④ 甲状腺切除後,2日,7日,14日で血中TSH(甲状腺刺激ホルモン)・T4(甲状腺ホルモン)を測定した結果,甲状腺再生時期にTSH値が上昇し,T4値が回復することが判明し,甲状腺再生にTSHが関係していることが示唆された.⑤ 甲状腺再生部の凍結標本を作成後,mRNAを回収・増幅後,cRNAmicroarrayを行った結果,癌・細胞死・胎生期甲状腺発生に関連する遺伝子発現を認めた. 以上の①-⑤の結果から甲状腺再生には,甲状腺前駆細胞あるいは幼若細胞が出現し,癌関連遺伝子・細胞死関連遺伝子・胎生期甲状腺発生関連遺伝子が系統的に発現することで組織再生がなされることが示唆された.再生初期で出現する前駆細胞あるいは幼若細胞がどのようにして起こったのか,何に由来するのかの検討は今後の研究に引き継がれる予定であるが,成熟甲状腺組織内に幹細胞が存在する可能性あるいは分化した甲状腺細胞が幹細胞様細胞に脱分化した可能性が示唆される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度計画であったマウス甲状腺切除後の病理組織学的・免疫組織化学的・電子顕微鏡的検討がなされ,①甲状腺再生が明らかにされたこと,②甲状腺再にかかわる前駆細胞あるいは幼若な細胞を明らかにしたこと,③甲状腺再生に関係する発現遺伝子を明らかなにしたこと,④癌・胎生期甲状腺発生にかかわる遺伝子が,成熟甲状腺再生にも関係していることを示したこと,以上は本年度の実験計画に沿って予定通り進められて,結果を出していることはおおむね順調に進展していると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
甲状腺再生部位の組織培養条件の検討と組織培養の確立を研究課題とする.方法として①再生部位を切除後,組織培養もしくはコラーゲンゲルマトリックス培養を行い再生の有無・培養条件(培養液,TSH濃度)を検討する. ② 再生部位内における幹細胞・脱分化細胞の存在の検討と,甲状腺幹細胞のクローニング,再生部位での培養組織中における幹細胞の存在の有無,あるいは成熟細胞脱分化の有無を免疫組織学的に検討する. ③ 甲状腺細胞が生涯に2,3回の分裂しかしないことを利用して,無限に分裂・増殖する甲状腺幹細胞のクローニングあるいは脱分化した幼若細胞を採取する. ④ 甲状腺切除後マウスに、再生結節、クローニングした幹細胞あるいは脱分化細胞の移植を行う. ⑤ 甲状腺再生に癌関連遺伝子がかかわっていることが今回の研究で示され、癌組織内における癌幹細胞あるいは脱分化細胞の存在(局在)も今後の研究課題とする.
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次年度の研究費の使用計画 |
甲状腺再生部位の組織培養条件の検討と組織培養の確立のため,そして人甲状腺癌の癌幹細胞あるいは脱分化細胞の存在の検討として ①マウス・人甲状腺標本作製試薬・物品 300,000円,②培養試薬・物品 400,000円,③定量RT-PCR・抗体・試薬 891,935円,④ヌードマウス購入・飼育管理 500,000円 以上の研究費 合計 2091,935 を使用予定.
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