研究課題/領域番号 |
24591372
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
岡崎 具樹 帝京大学, 医学部, 教授 (60203973)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 異所性ホルモン産生腫瘍 / PTHrP / PTH / マイクロアレイ / 組織特異的遺伝子発現 |
研究概要 |
本研究では、我々が遭遇した、後腹膜発生PTH産生かつPTHrP非産生の線維性悪性組織球腫(MFH)の症例の摘出腫瘍を用いて、厳格な組織特異的発現をする遺伝子として名高いPTH遺伝子が、その唯一の発現部位の副甲状腺細胞から逸脱して発生するに至った、異所性PTH産生成因を詳細に検討することを主目的とした。 これまでの検討から 1)腫瘍からは正常者副甲状腺からと匹敵する量のPTHmRNAが発現されていた。2)免疫組織化学的検査から、腫瘍標本からの十分な量のPTH蛋白の発現を確認した。3)副甲状腺発生に関わる転写因子群のうち、HoxA3のmRNAおよびタンパク量がやはり副甲状腺組織と同等レベルに高発現していた。4)副甲状腺細胞特異的発現に必要十分とされるPTH遺伝子上流5.5kbpの全塩基配列決定では、本症例にSNP以外の遺伝子変異や欠失はなかった。またメチル化の腫瘍特異的変化もなかった。5)奇妙なことに、3回におよぶ異なる時期での患者血中からのPTHrP濃度はすべて感度以下であったにもかかわらず、本腫瘍のPTHrPmRNA は、数種の異なるプライマーを用いたいずれのRT-PCR検索によっても、コントロールのPTHrP発現腫瘍と同レベルに発現していた。この発現の乖離の機序が新たな検討課題となった。6)他施設から報告されている4種のMFHのマイクロアレイ情報を本症例のcDNAマイクロアレイと比較検討した。これらのコントロール症例と比して本腫瘍では50種以上の遺伝子発現が10倍以上亢進していた。 この中でも、我々と同じく後腹膜原発ではあるがPTHを発現していないMFHのマイクロアレイの登録データを中心とした詳細な比較検討を現在施行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究結果から、我々の腫瘍の発生成因が、既知の異所性ホルモン発生機構によるものではなく新たなメカニズムに基づくものである可能性が想定されるようになった。そして、2012-2013年時点で利用可能なテクノロジーを用いて、腫瘍成因の同定に迫る我々のアプローチは順調に進行しており、その中でもマイクロアレイを完了させたことは順調な経過と言える。しかし、マイクロアレイの詳細かつ効率的な解析は今後の大きな課題であることも痛感している。 その一方で、次世代シークエンシング検索の2013年中の完了についての共同研究の目安もつき、全体の経過としてはまずまず満足できると考える。
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今後の研究の推進方策 |
施行済みのマイクロアレイ解読の完成が急務であると考える。さらに東大先端医学研究所の油谷研究室とのジョイントが決定し、本症例のエキソーム解析およびRNAseqが進められることは本研究の推進にとって非常に心強いと考えている。さらに副甲状腺特異的発現に中心的な役割を持つ転写因子の同定を、上記の研究成果とプロテオーム解析を通じて試みていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
マイクロアレイ解析関連のソフトウェアの利用。 エキソーム解析、RNAseq法の試薬の購入。 リアルタイムおよびRT-PCRに必要な費用。 ウェスタン、免疫組織化学に用いる諸抗体の購入。
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