研究課題/領域番号 |
24591372
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
岡崎 具樹 帝京大学, 医学部, 教授 (60203973)
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キーワード | PTH / 副甲状腺 / 異所性ホルモン産生腫瘍 / ビタミンD / HIC1 |
研究概要 |
後腹膜原発の悪性組織球腫症例に見られた著明な高Ca血症は、PTHrPでなくPTHの腫瘍からの大量発現によるものであることをRT-PCRおよび免疫組織学法により確認した。 しかし、本症例のPTH遺伝子上流約800塩基対、全エキソン、下流約800塩基対までの遺伝子配列には変異は認められなかった。 さらに、癌センターの市川仁博士が、10数例の悪性組織球腫症例のみを対象にマイクロアレイ法で遺伝子発現解析結果を報告していることを知り、そのうちの4例と我々の症例との間でデータマイニングを行った。 4つのサンプル(そのうち1例がやはり後腹膜原発であった)のデータを抽出し、比較検討した結果、ビタミンD代謝酵素(CYP24A1、CYP27B1)、腫瘍抑制遺伝子で副甲状腺腺腫でその発現低下が知られていたHIC1、さらにPTH遺伝子上流配列に結合してその遺伝子発現を促進するのに必要な転写因子群(AUF1、SP3、NFYB、p300、PCAFなど)のmRNAの発現量が我々の症例のみにおいて、著明に変動していた。予想通り、対象に用いた4例の悪性組織球腫症例は、いずれもPTH mRNAがほとんど発現していなかった。この結果は。我々が併行して行なった個別のRT-PCRのデータといずれもほぼ一致した。これらのことから、ここに述べた10種近くの遺伝子が異所性PTH遺伝子発現の原因に強く関わることが示唆された。 現在、東大先端研の油谷浩幸教授とともに次世代シークエンス法を用いて本症例のRNA-seqを行い、その解析を進めている。また、これらの結果から候補遺伝子をしぼりこみ、本症例を用いて、それらの蛋白の発現を免疫組織化学によって検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの結果を第一報として現在作成中である。 次世代シークエンスの結果によっては第二報以後も充実したものになることを強く期待している。進行は予定通り順調であると考えている。 今の段階で、これまでのデータをまだ英文刊行出来ていないことが「おおむね」という表現にとどまる原因になった。
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今後の研究の推進方策 |
現在解析を進めている次世代シークエンス法によってRNA-Seqを行って得られた情報と、すでに検討をほぼ終えたマイクロアレイの結果とを比較検討することで、非常に興味深い新たな知見が得られると考えている。副甲状腺細胞のみという組織特異的発現が非常に厳格なために、真の意味で異所性にPTHを発現する腫瘍例が極めて少なく、その発現制御機構が未だに不明の点が多いPTH遺伝子の転写調節についての詳細を明らかにできるのではと期待している。
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次年度の研究費の使用計画 |
次世代シークエンス試薬が当該年度以降の決済になるため 次世代シークエンスRNA-Seq用試薬類の決済が持ち越しとなった以外は、免疫組織や細胞培養など予定通りの使用を計画している。
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