研究課題
本症例において以下のことを見いだした。1)コピー数の増減のある30数個の部位のうち、40%にも上る15部位が、PTH遺伝子がある11番染色体に集中していた。神経内分泌膵島腫瘍で高頻度に欠損が見られるクロマチン構造改変蛋白ATRXがフレームシフト変異を起こし、その発現が消失していた(症例は男性でATRX はX 染色体にある)。ATRX遺伝子以外にエキソーム解析でフレームシフトによる蛋白発現欠落の候補遺伝子を25個にまで絞り、その中にはmed1などの転写共役遺伝子や、USP24などのユビキチン関連遺伝子なども含まれていた。2)PTH以外の遺伝子を副甲状腺細胞で発現させるための必要十分領域がPTH遺伝子上流5500塩基対にあるが、ここには遺伝子組み換え、変異、メチル化変化はなかった。このDNA配列に結合して、転写促進もしくは抑制するタンパク遺伝子の発現量変化を幾つかの転写因子で確認した。3)活性化ビタミンD濃度の上昇が起こるとその過剰を防ぐために、種々の組織からCYP24A1の発現が強力に誘導される。興味あることに、我々の症例組織(MFH)でのCYP24A1mRNAの発現量はPA(副甲状腺腫瘍)の10万倍以上に達していた。我々の仮説は、まず何らかの原因でCYP24A1が大過剰発現され、その発現細胞内に活性化ビタミンD濃度の著明な低下が起こることによって、PTHの産生刺激が激増するとともに、さらに何らかの腫瘍化刺激が重なった結果、その組織が腫瘍化した結果CYP24A1の大量発現が腫瘍化に関連するというものである。4)さらに、4例のPTH非発現MFHのアレイ結果との間でsubtractionを行い、副甲状腺腫と正常副甲状腺との間で発現に有意差があるものを抜粋して、最終的にはPTHの過剰発現に伴う二次的な変化を共通に受けるであろう遺伝子群を除外するところまでを完了した。またPTH遺伝子転写開始部近傍にいくつかのeRNAとも考えられるnon-coding RNAの発現を確認した。
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