研究課題
基盤研究(C)
ラット甲状腺FRTL-5細胞やマウス初代培養甲状腺細胞に対して強い電荷をかけることで細胞傷害を誘導した。それらの細胞から核を除いた細胞質分画を精製し、その中に含まれるゲノムDNAを量的および質的に検討したところ、ゲノムDNAの量は電荷の強さに応じて増加した。また、それらのDNAは様々なサイズの断片としてアガロースゲル上でスメアとして確認された。その際に、I型インターフェロン、各種炎症性サイトカインやケモカイン遺伝子発現が誘導されており、その程度は細胞外から2本鎖DNAをトランスフェクション法により細胞内に導入した際に認められる効果とほぼ同様であった。また、抗原の処理や提示に必要な一連の遺伝子も同じく誘導されうことが確認出来た。以上の検討により、感染時に病原体構成成分を認識することにより自然免疫系が活性化するだけでなく、甲状腺細胞における純粋な細胞傷害によって、免疫担当細胞の介在がなくてもほぼ同様の自然免疫および獲得免疫反応の活性化が誘導されることが確認出来た。さらに、マウス甲状腺初代培養細胞を作製する際に甲状腺周囲の筋細胞も培養して同様の実験を行ったところ、これらの細胞においてもインターフェロン、サイトカイン、およびケモカインの遺伝子活性化が誘導されることが明らかになった。したがって、甲状腺周囲に炎症や細胞傷害が起こった際には、甲状腺だけで無く周囲の間葉系細胞に由来する炎症因子も相乗的に作用し、甲状腺における炎症反応の誘導や修復機転が働くものと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画にある検討を全ておこなっており、研究実績の概要で述べた成果をあげることが出来た。DNAマイクロアレイおよび質量分析の検討も行っており、現在データの解析中である。
当初の研究計画通りに、電気刺激によって甲状腺細胞傷害を与えた際の甲状腺内分泌機能への影響に関して検討を行うとともに、細胞傷害などの刺激によって実際に自己免疫疾患を誘導可能かどうかについての検討を行うことを目的として準備を進める。ただし、DNAマイクロアレイや質量分析による網羅的発現解析の結果、細胞傷害などの効果を介在する重要な因子の候補が得られた場合には、それらの役割をさらに明確にするための検討を優先して行う必要が生じる可能性がある。
平成24年度は1,600,000円の予算に対し執行額が1,485,966円であり、114,034円が平成25年度に繰り越された。これは、一部の試薬の国内在庫が無く海外からの取り寄せのために納品が次年度になってしまったためであった。平成25年度は繰越金を加えて1,514,034の予算となる。この大部分は消耗品等の物品費として使用し、一部を旅費、謝金および論文投稿料などとして使用する予定である。
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