研究課題/領域番号 |
24591378
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
和田 龍一 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20260408)
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研究分担者 |
矢嶋 信久 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (30443980)
今泉 忠淳 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90232602)
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キーワード | Hodgkin lymphoma / Epstein Barr virus / IRF3 / EBER / CCL20 / Type 1 interferon / Tumor microebvironment |
研究概要 |
ホジキンリンパ腫では、Epstein Barr virus (EBV)の感染が腫瘍発生や病態形成に関与していると考えられているが、その機序は明らかではない。我々は、これまでにEBV感染を伴うホジキンリンパ腫では、自然免疫応答分子のRIG-Iが高発現しているものの、IRF3のリン酸化と核移行が阻害されていること、またCCL20の発現が亢進していることを明らかにした。今回、IRF3の下流にあるtype 1 interferonの発現の有無を確認するとともに、interferonやCCL20の発現の変化が、腫瘍細胞周囲の腫瘍微小環境の細胞構成に影響を与えるのか高齢者のホジキンリンパ腫において検討を行った。高齢者のEBV感染を伴うホジキンリンパ腫では、CCL20の発現の増加が見られ、IRF3の不活性化と相応して、interferonβの発現は認められなかった。一方、腫瘍微少環境の細胞構成を形態計測したところ、EBV感染症例ではCCL20に誘導されるFOXP3陽性の制御性T細胞が多く、interferonにより誘導される細胞障害性T細胞は少なかった。これらのことから、高齢者のホジキンリンパ腫においては、EBV感染は腫瘍細胞内での自然免疫応答を減弱させ、ケモカインやインターフェロンの発現を変化させ、腫瘍微小環境の免疫状態をさらに抑制していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの検討から、RIG-Iを中心とする自然免疫のシグナル経路が不活性化されていることが明らかとなっている。シグナル経路の不活性化をきたす因子が存在する可能性があり、この因子の抑制が新たな治療戦略となると考えられる。より詳細にRIG-Iのシグナル経路を解析し、不活性化の機序を明らかにするため、EBERのみを発現するホジキン細胞株の樹立を目指している。EBER発現ベクターの調整は終わったものの、ホジキンリンパ腫由来細胞株への導入が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのホジキンリンパ腫のRIG-Iシグナル経路の解析から、EBV感染症例ではIRF3の活性化が抑制されていることが病態形成に重要であることが推察された。このことから、ホジキンリンパ腫の実験的治療の戦略として、IRF3の活性化を考えている。 1) RIG-Iシグナル経路の解析と、シグナル経路を不活性化する因子の同定のため、EBERを発現するホジキン細胞株の樹立を目指している。ホジキンリンパ腫の腫瘍細胞内において、IRF3の活性化を阻止する分子の同定し、治療標的の可能性を探る。 2) 同定された不活性化分子に対する、実験的遺伝子治療として、siRNAによるノックダウン治療を試みる。 3) IRF3をリン酸化し活性化する分子の発現から、RIG-Iの自然免疫経路を活性化する治療戦略も考慮する。 IRF3の活性化から、腫瘍細胞内における自然免疫応答が活性化し、腫瘍細胞のアポトーシスや、化学療法薬に対する感受性の増加が期待される。
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