研究課題
G-CSFによる造血幹細胞の動員過程において、骨髄球系細胞のLR11が細胞内で発現上昇するとともに、骨髄内、血清可溶型LR11も上昇する。またG-CSFにより上昇した可溶型LR11が細胞の遊走、接着に関与することを報告してきた。またLR11は白血病細胞や悪性リンパ腫でも高発現し、病勢の強いものほどその発現が高いことも報告してきた。白血病細胞の分化制御を規定するPRDM16やWT1、GATAなどの転写因子とLR11の関りについて解析を行いつつ、G-CSFによるプロテアーゼの活性化機構について検討を行った。可溶型LR11はTCE(TNF-α converting enzyme)により切断される。TCEは可溶型LR11以外にTNF-α、H-EGF、CD44等も切断する。白血病細胞株にG-CSFを添加し、その培養上清中の可溶型LR11をELISA法にて測定したところ、時間依存性に上昇することを確認した。また同上清中においてTNF-αの濃度を検討したところ、可溶型LR11とTNF-αはほぼ同じ挙動を示すことが明らかとなり、G-CSFによりTCEが活性化されている可能性が示唆された。このプロテアーゼの活性化にTCEが主な役割を果たしているのかどうかを検討するために、TCEのインヒビターであるTAPI-0を用い実験を行った。G-CSF添加した系、TAPI-0 2時間pre incubation後G-CSFを添加した系、無添加の系をコントロールとし、TNF-αの測定を行った。しかしG-CSFによるTNF-αの産生上昇はTAPI-0により解除されなかった。以上の結果からG-CSFによるプロテアーゼの活性化はTCE以外のプロテアーゼが関与している可能性が示唆された。上記の結果を踏まえ、骨髄中の可溶型LR11が上昇している臨床検体で、骨髄クロットのTCEの免疫染色も更に検討を加えたが、クロット検体ではいずれの疾患でも明らかな陽性所見が得られず、MMP9についても検討したがやはり陽性所見が得られず、免疫染色に至る工程とともに、他のプロテアーゼの関与が示唆された。
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