研究課題
基盤研究(C)
研究計画①長期分化誘導により出現する造血幹前駆細胞の分化段階の同定と機能解析、及び研究計画②ヒトES細胞由来の造血幹前駆細胞とヒト成体型造血幹細胞の質的相違の解析:申請者がこれまでに同定した造血幹前駆細胞を多く含む細胞分画(CD34+CD43+細胞分画)を用いたマイクロアレイによる遺伝子発現解析では、ヒト臍帯血由来CD34+細胞に比べ赤血球系転写因子群や血管内皮細胞関連遺伝子群(VE-Cadherin、KDR、Tie2等)、胎児期造血幹細胞に発現が認められるAA4.1遺伝子の高い発現が認められるが、成体型造血幹駆細胞に発現しているCD150やCD48遺伝子の発現が低いことから、これらの細胞は卵黄嚢(YS: Yolk Sac)や傍大動脈・生殖・中腎領域(AGM: Aorta-Gonad-Mesonephros)において出現する造血発生初期の細胞を多く含む細胞群であることが推測され、造血幹細胞としてさらなる成熟が必須であることが示された。現在、分化誘導初期(培養10日)に出現する未熟な造血幹前駆細胞と分化誘導後期(培養16日、24日)に出現するより成熟していることが予想される造血幹前駆細胞、またヒト臍帯血由来CD34+細胞における遺伝子発現データの解析を進めている。研究計画③造血幹細胞の増幅・自己複製に関与する遺伝子の発現操作による機能解析、及び研究計画④白血病細胞誘導遺伝子の発現操作による機能解析:研究計画書に記載した胎仔期の造血幹細胞発生(5遺伝子)、成体造血幹細胞の増幅・自己複製(4遺伝子)、また白血病関連遺伝子(4遺伝子)をヒトES細胞より誘導された造血幹前駆細胞に過剰発現させ、in vitroにおける遺伝子スクリーニングを行なった。その結果、これまでにSox17遺伝子の過剰発現により顕著な細胞増殖や造血コロニー形成能の増加が認められている。
2: おおむね順調に進展している
研究計画①長期分化誘導により出現する造血幹前駆細胞の分化段階の同定と機能解析、及び研究計画②ヒトES細胞由来の造血幹前駆細胞とヒト成体型造血幹細胞の質的相違の解析:長期分化誘導により出現する造血幹前駆細胞の分化段階の機能解析を慎重に進めたため、マイクロアレイによる遺伝子発現解析に若干の遅れが生じた。しかしながら、Gene Ontology解析やGene Set Enrichment Analysis (GSEA)法を用いた解析による遺伝子抽出作業、抽出された遺伝子の詳細な機能について丁寧に論文検索を進めることにより、我々が目的とする質的相違の補完に関与する候補遺伝子が見つかるものと考えられる。研究計画③造血幹細胞の増幅・自己複製に関与する遺伝子の発現操作による機能解析、及び研究計画④白血病細胞誘導遺伝子の発現操作による機能解析:目標とした遺伝群の解析は順調に進んでおり、計画通り免疫不全マウス(NOD/SCID/Jak3null)を用いた移植実験による検証を行なう予定である。
ヒトES細胞より分化誘導して得られる造血幹前駆細胞が成体型造血幹細胞に比べin vitroでの増幅能力、また移植実験における生着能が著しく劣ることが示されており、この質的相違を解明することこそが本研究課題の目的である「ヒトES細胞からの造血幹細胞誘導」の大きな手掛りになると考えられる。その手掛りの基本となる細胞の同定(研究計画①長期分化誘導により出現する造血幹前駆細胞の分化段階の同定と機能解析)、またそれらの細胞とヒト臍帯血由来CD34+細胞における遺伝子発現データを丁寧に解析することにより、質的相違の補完に関与する候補遺伝子が見つかるものと考えられる(研究計画②ヒトES細胞由来の造血幹前駆細胞とヒト成体型造血幹細胞の質的相違の解析)。研究計画③造血幹細胞の増幅・自己複製に関与する遺伝子の発現操作による機能解析、及び研究計画④白血病細胞誘導遺伝子の発現操作による機能解析に関しては、遺伝群の解析は順調に進んでおり、計画通り免疫不全マウス(NOD/SCID/Jak3null)を用いた移植実験による検証を行なう予定である。
該当なし
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Blood
巻: 121 ページ: 447-458
10.1182/blood-2012-05-431403