研究課題
研究計画①長期分化誘導により出現する造血幹前駆細胞の分化段階の同定と機能解析経時的解析では、培養期間に伴い造血幹前駆細胞数の減少が認められたが、造血コロニー形成率は増加することが確認された。また、造血発生の指標の1つであるグロビン遺伝子群の解析では、培養期間に伴い胎児型グロビン遺伝子(γ-GLOBIN)の低下、及び成人型グロビン遺伝子(β-GLOBIN)の増加が認められた。このグロビン遺伝子の発現推移は、長期培養において単に造血幹前駆細胞が生存するというだけではなく、質的な変化を伴っているということを示唆すものである。研究計画②ヒトES細胞由来の造血幹前駆細胞とヒト成体型造血幹細胞の質的相違の解析では、研究計画①で同定中の長期培養後に存在する造血幹前駆細胞について、遺伝子発現解析を進めている。研究計画③造血幹細胞の増幅・自己複製に関与する遺伝子の発現操作による機能解析では、昨年度までの解析において顕著な細胞増殖や造血コロニー形成能の増加が認められたSOX17遺伝子の発現誘導系(Nakjima Y, Osawa M, et al. Blood, 2013)を用いて、造血幹細胞発生に関与する遺伝子群(5遺伝子)との共発現による機能解析を行った。SOX17遺伝子発現により誘導された造血内皮細胞において上記遺伝子と共発現実験系、またSOX17遺伝子の発現抑制による造血細胞の分化誘導系において検証を行ったが、SOX17遺伝子単独発現と異なる表現型を示す結果は得られなかった。研究計画④白血病細胞誘導遺伝子の発現操作による機能解析では、研究計画③と同様にSOX17遺伝子発現により誘導された造血内皮細胞、またSOX17遺伝子の発現抑制による造血細胞の分化誘導系において白血病関連遺伝子を共発現させて検証を行ったが、SOX17遺伝子単独発現と異なる表現型を示す結果は得られなかった。
2: おおむね順調に進展している
研究計画①長期分化誘導により出現する造血幹前駆細胞の分化段階の同定と機能解析では、長期培養に伴い造血幹前駆細胞の質的な変化を示唆するデータが得られ、長期分化誘導により出現する造血幹前駆細胞の機能的相違を明らかにしつつあり、計画通りに研究が進んでいるものと考える。研究計画②ヒトES細胞由来の造血幹前駆細胞とヒト成体型造血幹細胞の質的相違の解析においては、昨年度までに得られている培養前期に出現する造血幹前駆細胞(CD34+CD43+細胞分画)とヒト成体型造血幹細胞(CD34+細胞分画)の遺伝子発現プロファイルと長期培養において出現する造血幹前駆細胞の遺伝子発現プロファイルの比較検討を進めており、計画通りに研究が進んでいるものと考える。研究計画③造血幹細胞の増幅・自己複製に関与する遺伝子の発現操作による機能解析、及び研究計画④白血病細胞誘導遺伝子の発現操作による機能解析においては、当初の計画通り候補遺伝子のスクリーニングは進んでいるものの、造血幹細胞造の誘導や血幹前駆細胞の増幅を促進するような遺伝子の発見には至ってはいない。
研究計画①長期分化誘導により出現する造血幹前駆細胞の分化段階の同定と機能解析では、長期培養に伴い造血幹前駆細胞の質的な変化を示唆するデータが得られており、今後詳細な遺伝子発現や細胞表面抗原等を解析することにより、詳細な分化段階の同定と機能解析が明らかになると思われる。研究計画②ヒトES細胞由来の造血幹前駆細胞とヒト成体型造血幹細胞の質的相違の解析においては、研究計画①で同定中の長期培養により出現する造血幹前駆細胞(Late-stage HPC)について遺伝子発現解析を進めている。培養後期に出現する造血幹前駆細胞(Late-stage HPC)の遺伝子発現プロファイル、また昨年度までに得られている培養前期に出現する造血幹前駆細胞(Early-stage HPC)とヒト成体型造血幹細胞(Adult HPC)の遺伝子発現プロファイルとの比較検討を行い、①長期培養により成体型造血幹細胞での発現量に近づく遺伝子(Early-stage HPC<Late-stage HPC<Adult HPC)、②長期培養により成体型造血幹細胞での発現量の差が大きくなる遺伝子(Late-stage HPC<Early-stage HPC<Adult HPC)、③培養期間の有無に関わらず成体型造血幹細胞との発現量に相違が認められる遺伝子(Early-stage HPC&Late-stage HPC≠Adult HPC)についての解析を進め、ヒトES細胞由来の造血幹前駆細胞と成体型造血幹細胞において質的相違の責任遺伝子の探索を行う。研究計画③造血幹細胞の増幅・自己複製に関与する遺伝子の発現操作による機能解析、及び研究計画④白血病細胞誘導遺伝子の発現操作による機能解析に関しては、当初の計画通り候補遺伝子のスクリーニングは進んでいるものの、造血幹細胞造の誘導や血幹前駆細胞の増幅を促進するような遺伝子の発見には至ってはいないため、新たに研究計画②で得られた遺伝子群について解析を進める。
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