研究課題
平成24年度に、メチル化アレイを用いて、低酸素環境応答としてメチル化レベルが変化する遺伝子として、細胞周期進行に関わるCDKN2, DNAのメチル化修復に関わるMGMTなどを同定した。平成25年度はこのなかから、MGMTに注目し解析を行った。その結果、以下の事項を明らかにすることができた。解析には骨髄増殖性腫瘍由来の白血病細胞株HELおよびSET-2を用いている。両細胞ともJAK2の恒常活性型変異であるJAK2V617Fを有している。1. HEL およびSET-2細胞のMGMT遺伝子上のメチル化パターンの相違についてさらに詳細な解析を進めた。その結果、HEL細胞では遺伝子発現制御に関わるMGMT遺伝子上のプロモーター上で特にメチル化レベルが高いことが明らかにできた。2. 低酸素応答にてメチル化レベルが変化する領域の同定を行った。3. HEL細胞では骨髄内の低酸素ニッチの酸素分圧と考えられている1%O2環境で培養することにより、MGMT遺伝子のメチル化レベルの亢進が確認された。これと同時に、MGMTタンパクの発現レベルの低下が確認された。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、低酸素応答の新たな機序として、エピゲノム応答変化の可能性について追求することが大きな目標であるが、これまでにメチル化アレイ解析やmRNA発現解析などの手法を組み合わせる事により、血液細胞において、低酸素環境に反応してエピゲノム制御機構が変化することを確認することができた。現在は、さらにこれらの解析結果に基づき、その生物学的意義および臨床的な意義についての解析を進めている段階である。
今後は以下の点に焦点を絞り、研究を計画している。MGMTはDNAの修復に重要な遺伝子であり、またアルキル化剤に対する抵抗性獲得に関与している。このため、低酸素環境下でMGMTの発現が低下することは、低酸素環境下では骨髄増殖性腫瘍細胞はアルキル化剤への抵抗性が源弱している可能性がある。そこで、これらの細胞について、低酸素環境化でのアルキル化剤による増殖抑制やアポトーシス誘導について解析を進める。これを通じて、骨髄内低酸素環境に存在すると予想される骨髄増殖性腫瘍の腫瘍幹細胞の除去を目指した治療の可能性について追求を行う。
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Int J Hematol
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