研究課題/領域番号 |
24591387
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
清井 仁 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90314004)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 血液腫瘍学 / チロシンキナーゼ / 分子標的療法 / 白血病 |
研究概要 |
正常FLT3発現(Wt-FLT3)、変異FLT3発現(ITD-FLT3)、正常/変異FLT3共発現(Wt/ITD-FLT3)、細胞外領域欠失変異FLT3発現(cyITD-FLT3)、正常/細胞外領域欠失変異FLT3共発現(Wt/cyITD-FLT3)32D細胞に対する複数のFLT3阻害剤の増殖抑制効果をFL存在下、非存在下で比較検討した。cyITD-FLT3-32D細胞以外の変異FLT3発現細胞においては、FLT3に対する選択性の高さに応じて、FL存在下では阻害活性の減弱が認められた。この減弱効果は正常FLT3分子の共発現細胞において、より顕著に認められたが、cyITD-FLT3-32D細胞ではFLによる増殖抑制効果は認めなかった。これら発現32D細胞を同系のC3Hマウスに静注すると、変異FLT3発現細胞接種マウスは全例30日以内に白血病を発症し、死亡したのに対し、正常FLT3共発現細胞は白血病を発症しなかった。また、死亡までの期間はcyITD-FLT3-32D細胞が最も短期間であった。これら細胞株におけるFL刺激による細胞増殖、細胞周期に及ぼす影響を検討したところ、正常FLT3共発現細胞においては、細胞周期のG2停止とアポトーシス誘導が認められた。これらの結果より、FLによる細胞周期の停止が阻害剤の効果減弱に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リガンド存在下における受容体チロシンキナーゼ阻害剤の効果減弱について、複数のFLT3阻害剤において検証を行った。当初計画よりも複数の阻害剤が入手可能となったため、6種類の選択性の異なる阻害剤で評価を行い、予想されたとおり、選択性の高い阻害剤ほどリガンドによる阻害活性効果の減弱が強く認めることを確認した。更に、予想に反して、リガンド刺激は変異FLT3発現細胞の細胞周期を停止させ、アポトーシスを誘導することがin vitroで確認されるとともに、同系マウスへの移植実験においても、正常FLT3分子発現細胞の生着・白血病発症が認められないことを確認した。このことは、正常受容体型チロシンキナーゼのリガンド刺激に基づく活性化が細胞周期の低下をもたらし、阻害剤の効果を減弱している新たな可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により、正常FLT3のリガンド刺激に基づく活性化が細胞周期の低下をもたらし、阻害剤の効果を減弱している新たな可能性が示唆されたことより、リガンド刺激に基づく正常RTKの活性化が細胞周期に影響を与える分子機構を解明していくとともに、他の受容体型チロシンキナーゼ(RTK)についても同様の機序が生じているかを検証していく。 また、リガンド刺激による細胞周期停止作用が、リガンド中和抗体により解除され、阻害剤の増殖抑制効果が回復するかどうかを検証する。 臨床検体を用いたin vitroならびにNOGマウスへの異種移植系においての評価を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞周期、細胞死、シグナル伝達機構の検討のための、細胞培養試薬・機器、抗体などの物品購入に主として使用する。また、成果発表、情報収集のための国内・国際学会出席の旅費としても使用予定である。
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