研究課題
昨年度までに、正常FLT3発現(Wt-FLT3)、変異FLT3発現(ITD-FLT3)、正常/変異FLT3共発現(Wt/ITD-FLT3)、細胞外領域欠失変異FLT3発現(cyITD-FLT3)、正常/細胞外領域欠失変異FLT3共発現(Wt/cyITD-FLT3)32D細胞を樹立し、cyITD-FLT3-32D細胞以外の変異FLT3発現細胞においては、FLT3に対する選択性の高さに応じて、FL刺激はFLT3阻害剤の増殖抑制効果の減弱を来すこと、これら各種FLT3発現32D細胞を同系のC3Hマウスに静注すると、変異FLT3発現細胞接種マウスは全例30日以内に白血病を発症・死亡したのに対し、正常FLT3共発現細胞は白血病を発症しないことを明らかにした。これら細胞株をNOD/SCIDマウス皮下に接種すると、その腫瘤形成速度は変異FLT3分子発現細胞よりも正常FLT3共発現細胞において有意に遅いことが明らかとなった。これら細胞株においてFL刺激は正常FLT3共発現細胞に対し細胞周期のG2停止とアポトーシス誘導をもたらすが、正常FLT3分子のリン酸化とMAPK、STAT3の活性化を誘導することが明らかとなった。一方、STAT5の活性化は変異FLT3分子特異的に認められ、FL刺激に基づく正常FLT3分子の活性化によっては誘導されなかった。これらの結果より、FLによる正常FLT3分子の活性化に起因するMAPKとSTAT3の活性化が細胞周期の停止、増殖速度の低下、更にはFLT3阻害剤の効果減弱に関与している可能性が示唆された。更に、リン酸化タンパクアレイによる解析の結果、正常FLT3共発現細胞にFL刺激を与えた際に特異的に活性化される候補分子を同定した。この活性化分子を介したシグナル伝達経路がFLによるFLT3阻害剤の効果減弱に関与している可能性が示唆され、現在解析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
リガンド存在下における受容体チロシンキナーゼ阻害剤の効果減弱について、複数のFLT3阻害剤において検証を行い、選択性の高い阻害剤ほどリガンドによる阻害活性効果の減弱が強く認めることを確認した。更に、予想に反して、リガンド刺激は変異FLT3発現細胞の細胞周期を停止させ、アポトーシスを誘導することがin vitro, in vivoで確認した。このことは、正常受容体型チロシンキナーゼのリガンド刺激に基づく活性化が細胞周期の低下をもたらし、阻害剤の効果を減弱している新たな可能性を示唆しているが、正常FLT3共発現細胞にFL刺激を与えた際に特異的に活性化される候補分子を同定したことより、更なる研究の発展が期待できる。
今年度までの研究により、正常FLT3のリガンド刺激に基づく活性化が細胞周期の低下をもたらし、阻害剤の効果を減弱している新たな可能性が示唆された。リガンド刺激に基づく正常FLT3の活性化がMAPK、STAT3などの特異的分子の活性化をきたしていること、正常FLT3共発現細胞にFL刺激を与えた際に特異的に活性化される候補分子を同定したことより、この活性化分子を介したシグナル伝達経路がFLによるFLT3阻害剤の効果減弱に関与している可能性が示唆され、次年度以降、詳細な解析を実施していく。また、臨床検体を用いたin vitroならびにNOGマウスへの異種移植系においての評価を進める。
in vitroでのシグナル解析が中心となり、新たな活性化分子の同定に時間を要したため、次年度使用額が生じた。細胞周期、細胞死、シグナル伝達機構の検討のための、細胞培養試薬・機器、抗体などの物品購入に主として使用する。また、成果発表、情報収集のための国内・国際学会出席の旅費としても使用予定である。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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