研究課題
ヒトのB細胞リンパ腫では、Cyclin D1転座とマントル細胞リンパ腫、BCL2転座と濾胞性リンパ腫など、特定の染色体転座と組織型との間に密接な関わりがあることが知られている。しかし、悪性リンパ腫は多くの遺伝子異常が蓄積して発症する腫瘍であり、遺伝子異常の一つに過ぎない染色体転座がどのようにしてその後生じるリンパ腫の組織型に影響を及ぼすかについてはこれまで明らかになっていない。申請者はp53ヘテロ欠損マウス由来の骨髄細胞に、CD19プロモータ下にCyclinD1もしくはBCL2をつないだ遺伝子発現ベクターを導入し、放射線照射で前処置を行った同系マウスに移植を行うことで、これらの遺伝子が高発現するB細胞リンパ腫のモデルを作出した。これらのマウスはそれぞれ移植後5ヶ月頃よりB細胞腫瘍が生じ、それぞれヒトのマントル細胞リンパ腫および濾胞性リンパ腫に類似する形態学的所見と免疫組織学的特徴を備えていることが判明した。また、これらの腫瘍に続発する遺伝子異常について詳細に解析を行ったところ、それぞれに特徴的な遺伝子異常の導入様式および遺伝子標的を持つことが明らかになった。以上から、Cyclin D1やBCL2転座は、悪性リンパ腫の発症過程において先行する遺伝子異常として生じ、それらが後続する遺伝子異常のパターンに影響を及ぼし、最終的に形成されるリンパ腫の組織型を方向づける役割を果たすことが示唆された。本研究の詳細については現在論文作成中である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
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