研究実績の概要 |
成人T細胞白血病 (adult T-cell leukemia: ATL)の多くの患者で認められるNF-kBの恒常的活性化の機序の解明を試みた。ATLの患者32名から、文書による同意を得た後に腫瘍細胞のDNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いて網羅的に体細胞変異の検索をおこなった。NF-kB経路に関わる遺伝子のうちで、これまで他のリンパ系腫瘍で報告のあるA20, Bcl10, MYD88などでは、変異が確認されなかったが、CARD11のcoiled-coil domainに二種類の点突然変異が認められた(M360V, D401Y)。この突然変異を導入したCARD11は、luciferase reporter assayによる解析で、NF-kBを活性化した。しかし、遺伝子導入した細胞では、細胞増殖への寄与は確認されず、ノックダウンにても増殖抑制やアポトーシスの誘導は有意ではなかった。解析に用いた32名の患者検体を用いた定量RT-PCRでは、正常のCD4陽性T細胞と比べて、CARD11は優位に発現が亢進しており、gel shift assayでは全ての症例でNF-kBは活性化していた。アレイのデータベースを用いた解析でもATLではCARD11の有意な発現亢進が認められた。これらの結果から、CARD11はATLにおいて細胞増殖や抗アポトーシスへの直接的な寄与は限定的であるが、NF-kBの活性化には広く関与している可能性が示唆された。
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