WT1遺伝子は様々な腫瘍の発生・悪性化に関与する。本課題ではWT1の新たな癌遺伝子機能としてDNA損傷修復促進と代謝調節の二つを明らかにした。まず、WT1のWTC isoformは遺伝子組換え(HR)因子のRad51D、XRCC2、およびRad54の発現を上昇させDNA損傷修復の主要経路HRを促進することで、腫瘍の抗癌剤抵抗性をもたらした。次に腫瘍細胞の細胞質に発現するWT1タンパクが、細胞の代謝に関わる酵素に直接結合しその活性を増強していることを示した。以上の知見はWT1遺伝子が様々な機序で癌遺伝子様機能を果たすとともにこれらを標的とした新たな分子標的治療法開発の可能性を示すものである。
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