研究課題/領域番号 |
24591397
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
松井 啓隆 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 准教授 (60379849)
|
研究分担者 |
金井 昭教 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (60549567)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 骨髄異形成症候群 / DNAメチル化 / ヒストン修飾 / エピゲノム / 次世代シーケンサー |
研究概要 |
まずK562白血病細胞株を実験モデルとして、DNA脱メチル化剤による細胞分化とDNAメチル化変化との関連を検討した。次世代シーケンサーによるDNAメチル化の解析には、MBDドメインタンパク質によるメチル化DNA断片の濃縮精製法(MethylCap-seq)と、RRBS法を用いた。 K562細胞では、培養液中へのDNA脱メチル化剤添加により658遺伝子のプロモーターが有意に脱メチル化されたが、このうち遺伝子発現が2倍以上増加したものは86遺伝子に過ぎないことが分かった。この86遺伝子は、プロモーター脱メチル化により発現誘導されなかった572遺伝子と比較して、特にプロモーターのDNAメチル化が強いということはなかった。しかしながら、これら86遺伝子はDNA脱メチル化剤添加前のmRNA発現量が比較的少ない遺伝子であったことから、プロモーターのDNAメチル化に加えて、他のエピゲノム因子による発現抑制を受けているものと推測された。 そこで、ChIP-sequence法によりヒストン修飾状態の検討を行った。その結果、プロモーター脱メチル化により発現増加した86遺伝子は、転写開始点近傍にH3K4me3とH3K27me3の両方のピークを持つbivalentな状態であることが判明した。以上のことから、DNA脱メチル化剤の標的となりうる遺伝子は、プロモーターDNAがメチル化されていることに加え、ヒストン修飾制御をうけており発現準備状態にあることがわかった。 これらの結果をもとに、現在MDS患者由来CD34陽性細胞を用いてDNAメチル化とヒストン修飾状態の解析を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DNA脱メチル化薬は広く非特異的にDNAを脱メチル化させるため、骨髄異形成症候群においてどのような遺伝子が薬剤の直接標的になりうるのか特定するのは困難であったが、我々の解析により、DNAのメチル化に加え特定のヒストン修飾状態を有する遺伝子が選択的に発現誘導されることが判明した。 したがって、今後臨床サンプルを用いた解析に着手するための基礎的知見を得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、臨床サンプルを用いたエピゲノム解析を進めていく予定である。骨髄異形成症候群患者より提供をうけた腫瘍細胞からCD34陽性の未熟細胞を分離し、この細胞を用いて、RRBS法によるDNAメチル化解析と、ChIPシーケンス法によるヒストン修飾状態の解析を進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次世代シーケンシングに必要な試薬消耗品、および修飾ヒストンに対する抗体の購入を予定している。
|