研究課題/領域番号 |
24591402
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
安井 寛 東京大学, 医科学研究所, 特任講師 (40448593)
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研究分担者 |
石田 禎夫 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (20305220)
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キーワード | 多発性骨髄腫 / 抗体医薬 / 改変抗体 / 三重特異性抗体 / 免疫細胞 |
研究概要 |
当該研究では、新領域の抗体医薬である三重特異性抗体の作成技術をもとに、骨髄腫に対して有効な抗CD38・抗CD3三重特異性抗体を作製する。作製抗体における標的分子との結合能、in vitroでの細胞障害活性、in vivo での抗腫瘍効果を評価し、その至適化をはかる。 初めに、複数のマウス抗CD38モノクローナル抗体を作製し、そのうち分子間相互作用解析装置BiacoreおよびFACSを用いてCD38分子との結合力が高い抗体を選択し、ヒト骨髄腫異種移植マウスにおいて著明な抗腫瘍効果を認める抗体を選択した。 その抗体と、抗CD3抗体のH鎖、L鎖可変領域遺伝子それぞれをクローニングし、ヒトIgGの定常領域遺伝子と融合した三重特異性抗体(CD3/CD38)遺伝子ベクターを作製、CHO細胞に導入し発現した三重特異性抗体(CD3/CD38)を作製し精製した。遺伝子ベクターを改変することにより、7種類のヒト化三重特異性抗体(CD3/CD38)を作製し、安定性、CD3, CD38, CD16 (Fc受容体)との結合能、in vitroでの細胞障害活性を評価し、2つの有望な抗体を選択した。In vivo 評価系として、疾患モデルマウスに骨髄腫皮下移植マウス、effector 細胞としてヒトT-LAK もしくはヒトPBMCを用いる系で、2つの抗体の効果を検証したところ、in vivo での効果が十分とは言い難く、その理由として抗体の安定性が十分でない可能性が考えられた。現在、より安定性の高い抗体を作製し、in vitro, in vivo にて効果を検証中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
はじめの1年で、多発性骨髄腫に特異的な抗原を標的とした三重特異性抗体を複数作製でき、in vitro での抗腫瘍効果が確認できた。in vivo での抗腫瘍効果の検証結果に基づき、抗体の最適化を進めている。当研究にて想定内の経過であり、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
至適抗体の選択のためには、複数の抗体を作製し、in vitro, in vivo での効果を検証し、その結果に基づき、さらに最適化を繰り返す必要がある。至適抗体の作製、スクリーニングの評価系を確立するためには、実験のみならず、さらなる資料収集と、研究者間との情報交換や討論が必要であると考えられる。さらに、将来的に、出口を見据えた橋渡し研究へと展開するため、知財・薬事・レギュラトリーサイエンス・臨床試験論を含めた検討が必要と考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に研究代表者が所属施設を異動したため、未使用額が計上された。当該年度は実施に伴う使用が順調に進み、初年度未使用額の多くが使用されたが、使い切るまでには至らなかった。 次年度が最終年度であり、すべての交付額を使用し、研究を加速する予定である。
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