研究課題/領域番号 |
24591406
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
飯田 真介 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50295614)
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研究分担者 |
李 政樹 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00567539)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 医療 / 癌 / 薬剤反応性 / リンパ腫 / 骨髄腫 |
研究概要 |
本研究は、難治性リンパ系腫瘍におけるHDAC阻害剤(SAHA)耐性の細胞株(皮膚T細胞性リンパ腫及び多発性骨髄腫)を既に樹立し、その親株との比較により耐性機序を解明することが目的である。これまでのところ、耐性株と親株を比較することで、以下のことを明らかにした。 1. SAHA耐性の細胞株は、他の汎HDAC阻害剤(panobinostat)に対しても、同様に耐性を示すこと。2. HDAC耐性細胞株は、HDAC全体の活性が低下しており、またHDAC阻害剤によるHDAC活性阻害に対して低感受性であること。3. HDAC耐性細胞株の各HDACの遺伝子の主なexon領域を調べた結果、変異は見当たらないこと。4.HDAC耐性株においては、HDAC3の発現レベルが共通して低下していること(遺伝子レベルで確認、タンパク発現は確認中)。5.shRNA法を用いて親株におけるHDAC3発現を抑制したところ、HDAC阻害剤の感受性が低下したこと。他のHDAC(HDAC2, HDAC8)を阻害した場合には、HDAC阻害剤の感受性には変化がなかったこと。つまり、HDAC阻害剤の作用機序には、特定のHDACが関与している可能性があること。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、以下の項目を中心に研究を行った。次年度を合わせた2年にかけての達成予定としている。 1. HDAC阻害剤耐性細胞株と感受性株間のHDAC発現及び活性変化の検討 2. 耐性株と感受性株間の遺伝子発現変化(主にヒストン修飾による遺伝子発現変化の観点から) HDAC阻害剤耐性株とその親株の比較において、耐性株のHDAC活性が低下していることが判明し、また、HDAC群の中でもHDAC3などの特定の酵素群が、HDAC阻害剤の感受性に関与している可能性が示唆され、今後のさらなる解析へと発展しうると考えられる。 一方、耐性株と感受性株間での、遺伝子発現変化の探索では、抗アポトーシス因子を含めたいくつかの遺伝子群の発現をリアルタイムPCRで確認したが、有意に差のある遺伝子をまだ同定できておらず、網羅的な解析手法が必要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究成果を継続発展させ、引き続きHDAC阻害剤が及ぼす多岐にわたる作用の中での重要な作用機序の解明および、難治性リンパ系腫瘍におけるHDAC発現異常の生物学的意義の解明も併せて解明することを目標とする。 具体的には、これまで検討してきたHDAC群の解析(主にclass I,II)だけでなく、まだ未検討の酵素群、具体的にはclassIII&IV; sirtulin 1-7,HDAC11の発現活性や発現に関して、HDAC阻害剤耐性株と親株間で比較解析を行い、HDAC3以外の、HDAC阻害剤の感受性にかかわる因子を探索する。また、耐性株と親株の遺伝子発現パターンを比較解析することで、HDAC阻害剤によるヒストン修飾(アセチル化)による発現変化の影響を受ける、HDAC阻害剤の感受性に係る遺伝を探索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ほぼすべての各HDAC活性を網羅的に測定し、耐性株と親株間で比較解析する。手法として、個別のHDAC活性を測定する市販の特異的 HDAC / Sirtuin 活性測定キット等を使用する。変化の見られた特定のHDACに関しては、HDAC3での検証と同様に、レンチウイルスを用いたshRNAによるノックダウン系、もしくは逆に強制発現系を駆使することで、HDAC阻害剤耐性の再現の有無や、耐性解除の現象等を確認する。 また、HDAC阻害剤投与早期状態の親株(アポトーシスの進行前)と、HDAC阻害剤投与下での耐性株の両サンプルを用意し、Genechipアレイを用いた網羅的なmRNA発現比較解析を計画している。さらには両者のChIP on chipアレイ解析(抗アセチルヒストンH3抗体で免疫沈降)の結果も合せることで、HDAC阻害剤による直接的な変動を受ける遺伝子の同定も試みる。
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