研究課題
基盤研究(C)
1.8q24異常を有する多発性骨髄腫の解析から、der(16)t(16;22)ins(16;8)(q23;q24)を有するRPMI8226細胞株において新規にPVT1-WWOXを同定した。PVT1-WWOXでは、以前に同定したPVT1-NBEAと同様に、PVT1のエクソン1がWWOXと融合していたが、WWOXの融合は9個のエクソンからなるWWOXのエクソン9で生じており、WWOXのほとんどの領域は欠失していた。キメラ遺伝子におけるPVT1の役割については今後さらに検討を進めていく。2.t(6;14)(q25;q32)を有し、14q32の切断点がBCL11Bのごく近傍にあることが判明した小児のT細胞性急性リンパ性白血病症例を解析したところ、リボゾームRNAをコードするRN28S1遺伝子とBCL11Bの融合転写産物を同定した。この転写産物は、観察された転座以外の機序で形成されていると考えられた。さらにさまざまなタイプの造血器腫瘍細胞株24株を用いて検討したところ、IGK、COG1とRN28S1が融合する転写産物を同定した。RN28S1が関与するキメラ遺伝子としてはBCL6との融合が報告されているが、その腫瘍化における意義については検討されていない。同定されたキメラ遺伝子を形成するゲノム構造異常について、現在検討中である。3.t(11;19)(q23;p13), t(8;16)(p11;p13)などの既知のキメラ遺伝子の存在が予想される染色体異常でありながら、従来のさまざまな方法によってキメラ転写産物を同定できなかった検体、11p15転座でのNUP98、11q23転座のMLLなど、既知の遺伝子の関与が予想されるのにもかかわらず、cDNAバブルPCR法などでのキメラ遺伝子の同定ができなかった合計16検体についてRNAシーケンスを行い、現在得られたデータを解析中である。
2: おおむね順調に進展している
8q24転座、8q24転座以外の解析で、いずれも新規のキメラ転写産物を同定できており、これらについては順調に研究が進展している。特に、8q24以外では、これまで認識されていない新しいタイプのキメラ転写産物が同定され、これについては今後予想以上の展開に発展する可能性があると思われる。一方、RNAシーケンスによる未知のキメラ転写産物の同定については、予想以上にデータ解析に苦労しているが、研究としては順調に進捗している。
1.RNAシーケンスで得られたデータの解析を引き続き行い、新規のキメラ転写産物を同定する。2.PVT1、RN28S1についても、引き続きその関連するゲノム構造異常、アイソフォームなどについて詳細に解析する。細胞株、臨床検体などを用いて、その頻度を検討し、臨床像との関係を検討する。3.遺伝子導入やsiRNAによるノックダウン解析により、新規キメラ遺伝子の細胞の増殖能、分化能などについて検討する。4.さまざまな造血器腫瘍における新規のキメラ転写産物の同定を引き続き行う。平成24年度と同様に、ゲノムアレイ、G分染法、FISH法、SKY法などで相手遺伝子候補が推定できる場合はRT-PCRで、相手遺伝子の同定が難しい場合はcDNAバブルPCR法を行い、それでも同定できない場合は次世代シーケンサーによるRNAシーケンス法を行う。
購入予定だった試薬の国内在庫がなく、24年度の購入に間に合わなかったため、11,006円の残額が生じた。25年度に消耗品費として使用する。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (8件)
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