研究課題/領域番号 |
24591408
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
奥田 司 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30291587)
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研究分担者 |
阪倉 長平 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10285257)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Runx1 / AML1 / ES細胞 / 遺伝子改変マウス / 白血病 / 造血 / ノックイン / 転写因子 |
研究概要 |
白血病関連転写因子であるAML1(Runx1)は造血初期発生において重要な役割を担う。近年、AML1タンパク質の翻訳後修飾が、その転写活性化能に大きな影響を及ぼすことが示されているが、生物作用への影響の詳細は明らかにされていない。本年度、当該研究ではこうした翻訳後修飾の意義を明らかにする目的で、AML1のDNA結合ドメインの下流に位置する2箇所のアルギニン(R)残基のメチル化について検討した。 これらのアミノ酸を、メチル化を受けない塩基性アミノ酸であるリシン(K)に置換したところ、転写活性化能の低下を認めた。これは、これらの残基のメチル化が転写のコリプレッサーの解離をもたらすとする先行研究での観察と合致するものであった。 一方、この非メチル化AML1変異体をAML1欠損ES細胞に導入し、その造血分化における作用を検討したところ、野生型AML1の導入実験と同様に、失われていた試験管内での血液細胞発生を取り戻させる作用があることを見出した。すなわち、少なくとも骨髄系細胞の初期発生制御にはこのメチル化修飾は必須のものではないことが示唆された。 これを受けて、このR→K変異を胚細胞系列で保有する遺伝子改変マウスの作製を試み、ヘテロ接合体の樹立の後、交配によってホモ接合体を得ることに成功した。ヘテロ同士の交配によって、ホモ接合体はメンデル則の従った頻度で生誕することを見出した。すなわち、個体のレベルにおいてもAML1のメチル化修飾は造血の個体発生には大きく影響しないことが証明されたことになる。このホモ接合マウスは自然には白血病を発症せず、また、貧血も認めなかった。 今後、AML1のメチル化修飾の持つ生物作用解明のため、ホモ接合マウスの詳細な検討を行なう予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Runx1のメチル化部位変異ノックインマウスの作製に成功したことは有意義であったものと考える。少なくとも、この部位のメチル化が、造血の初期発生にとって必須ではない、ということを個体のレベルで初めて明らかにしえたものと考えている。また、このマウスの詳しい検討によって、AML1の新たな生物作用を明らかにできる可能性があるものと考えている。さらに、現在準備を進めている、同様のストラテジーによって作製するリン酸化変異体ノックインマウスの研究をすすめるうえで、当該マウスの研究経験が生かせるものと期待している。
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今後の研究の推進方策 |
AML1は造血初期発生制御にくわえ、成体ではT細胞分化や血小板成熟において重要な役割を担うことが誘導的ノックアウトマウス解析等によって明らかにされている。そこで、次年度は、今回作製したAML1メチル化変異ノックインマウスについて、その胸腺細胞や細胞性免疫能、そして巨核球・血小板機能の検討を行なって、AML1のメチル化がどのような生物作用を担っているか特定を試みたい。 くわえて、研究代表者らは、AML1のセリン/スレオニン残基リン酸化部位の変異ノックインES細胞の構築に成功している。この細胞を用いて、ノックインマウス作製し、その生物影響についての検討を行ないたい。 さらに、こうした翻訳後修飾検討の補完的アプローチとして、われわれは酵母ツーハイブリッド法でAML1と結合する候補分子群を特定している。こうした分子の解析も並行して進めてゆきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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