研究課題/領域番号 |
24591408
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
奥田 司 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30291587)
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研究分担者 |
阪倉 長平 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10285257)
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キーワード | Runx1 / AML1 / ES細胞 / 遺伝子改変マウス / 白血病 / 造血 / ノックイン / 転写因子 |
研究概要 |
急性白血病におけるクラスII遺伝子変異の標的となるAML1(Runx1)転写因子は造血の初期発生において重要な役割を担う。また、成体においては、血小板産生、骨髄細胞増殖、そしてT細胞分化に重要な役割を担っている。他方、AML1自身がどのようなシグナル伝達によって制御されているのかは明らかにされていない。こうしたなか、最近、AML1タンパク質の翻訳後修飾が、その転写活性化能に大きな影響を及ぼすことが示されている。そこで、当該研究ではこのような翻訳後修飾のもつ生物作用の解明を試みている。 これまでの検討で、AML1のDNA結合ドメインの下流に位置する2箇所のアルギニン(R)残基はPRMT1によるメチル化を受けること、これらのアミノ酸をメチル化を受けない塩基性アミノ酸であるリシン(K)に置換すると転写活性化能が低下すること、しかしながらこの非メチル化AML1変異体はES細胞の試験管内血球系分化作用を保持していること、などを明らかにしてきた。 今年度は、このR→K置換変異を胚細胞系列で保有するノックインマウスを作製し、解析を行なった。ノックインアリルのホモ接合体マウスは生存可能であり、交配も可能であった。また、生存期間内に白血病発症は生じず、貧血も生じなかった。すなわち、AML1のメチル化修飾は造血の個体発生には大きく影響しない。成体では、AML1コンディショナルノックアウトマウスで報告されてきたような骨髄球系の増殖や血小板の異常は観察されなかった。しかしながら、末梢血中のリンパ球の減少を認め、これはCD4陽性細胞の減少とCD4/8比の低下によるものであることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究で作製されたAML1のミスセンス変異ノックインマウスの解析を通じて、この分子のメチル化修飾によって左右される生物作用を、マウス個体のレベルで特定できたものと解釈している。 現在、この分子のリン酸化変異体の解析へと検討を進めている。また、新規会合分子候補群の検討の準備が整いつつあり、こうしたアプローチによってAML1作用制御のより深い理解が得られるものと期待している。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者らは、翻訳後修飾によるAML1作用制御メカニズムの系統的な解析の一環として、今年度行なったメチル化部位変異体にくわえて、AML1のセリン/スレオニン残基のリン酸化部位のミスセンス変異ノックインES細胞を作製している。そこで次年度はこうした細胞を用いて、in vitroでの生物作用の解析や改変マウスの作製を行なう。そして、その生物影響を解明する。 また、研究代表者は、上記の補完的アプローチとして、AML1のN末端ドメインやC末端と結合する候補分子群を複数特定している。次年度はこうした分子との機能関連についての解析も並行して進めてゆく予定である。 こうした一連のアプローチによって、AML1自身の機能を制御する分子メカニズムを浮き彫りにしてゆきたい。
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