研究課題
基盤研究(C)
ヒトCD34陽性細胞への白血病関連遺伝子導入in vivoモデルは、生体内における白血病発症をprospectiveに観察する実験系として極めて有用であり、ヒト疾患における遺伝子発現や細胞分化段階の解析において大きな優位性を有する。近年の網羅的遺伝子解析技術を用いた研究から、急性骨髄性白血病(AML)患者検体においてDNAがメチル化されていること、DNMT3A、IDH1、IDH2などのDNAメチル化関連遺伝子に変異が検出されることが報告され、AML発症にDNAメチル化によるエピジェネティックな変化が重要な役割を果たしていることが示唆された。本研究は、このヒト化in vivo白血病誘導モデルを用いて、AML発症におけるメチル化関連遺伝子異常の関与の可能性を直接的に検証することを目的としている。平成24年度は、検討に必要なベクターの作製を中心に行った。DNMT3A変異、IDH1変異およびIDH2変異発現ベクターは、MIGR1-IRES-mOrangeを用いて作製した。また、正常核型に認められるNPM1変異とFLT3-ITD変異は同時に発現することもしばしばあることから、2Aを介在させた形でNPM1変異とFLT3-ITD変異を同時に発現するベクターを、MIGR1(EGFPで発色)を用いて作製した。sequence確認後、これらのベクターを293T細胞に強制発現させ、タンパク発現をwestern blotにより確認した。現在、ウイルスの作製を行っている。感染効率の高いウイルス作製条件が決定次第、ヒト臍帯血由来CD34陽性細胞への感染、および感染細胞の重症免疫不全マウスであるNOG (NOD/Shi-scid, IL-2Rγnull) マウスへの移植を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
検討に最低限必要なベクター作製は終了した。現在、遺伝子導入したCD34細胞をNOGマウスへ移植する準備を行っている。これまでのところは、当初の予定通りの進行状況であり、現段階においてはおおむね順調に進行しているものと考えられる。しかし、感染効率の良いウイルスを作製することや、機能遺伝子を有するウイルスベクターをヒトCD34陽性細胞に導入することはしばしば困難を伴う。実験条件の設定を丁寧に行って至適な条件を見つけていくことが最優先であるが、うまく導入が行かない場合には、新たなエピジェネティックに関連した遺伝子変異のベクター作製や、標的となる細胞の変更など、実験条件の変更を行う必要が出てくる可能性がある。
実験計画に従って、NPM1変異とFLT3-ITD変異を同時に発現するベクターとともにエピジェネティクスに関連した遺伝子異常を発現するベクターをヒトCD34陽性細胞へ感染させる。これらの細胞をNOGマウスへ移植し、白血病発症能の検討を行う。白血病が生じた場合には、細胞分画、細胞形態および細胞表面マーカーの検索を行い、白血病の病型の決定を行う。さらに2次移植を行い、生じた白血病細胞が自律性増殖を有していることを確認する。また、NPM1変異とFLT3-ITD変異を同時に発現するベクターの代わりにそれぞれを単独に発現するベクターを用いて同様の検討を行い、白血病発症に必要な遺伝子異常を同定する。胆癌マウスに対しては、Ara-Cおよびイダルビシンの抗がん剤を行い、投薬の有無により骨髄および脾臓における白血病細胞の組織内分布の検討を行い、臨床的検討から知られている遺伝子異常と予後の関係について確認する。In vivoにおける生着が確認できない場合には、in vitroの培養系における検討を中心に行う。この場合、必要に応じてstroma cellsを用いて行う。
本研究を行うにあたって、retronectinを用いたlipofectionによるレトロウイルスの作製、ヒト臍帯血の使用、NOGマウスへの移植および飼育が必要である。これらに対し、研究費を使用する予定である。次年度以降には、エピジェネティクスに関連した遺伝子異常が実際にDNAメチル化に寄与していることを確認するために、ChIP-chipやメチローム解析を行う予定である。また、異なる遺伝子異常の組み合わせにより白血病が生じた場合、表現系に大きな差異がない場合にはmicroarrayを行って遺伝子発現の差異を検討し、臨床検体におけるデータと比較する。
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