研究課題
我々は急性骨髄性白血病(AML)の再発時に認められるCAP1遺伝子(CAP1)変異に注目をした。CAP1はアクチン結合タンパクの一つで、近年アポトーシスへの関与が示唆された。本研究はCAP1変異を認めるAMLの臨床的特徴やCAP1変異の白血病発症や再発の機序を明らかにすることを目的としている。1.骨髄球性腫瘍のおけるCAP1変異のスクリーニング昨年度に引き続きCAP1変異を認めるAMLの臨床的特徴を明らかにするために新たにAML初発89症例、再発39症例、骨髄異型性症候群の白血化5症例、骨髄増殖性腫瘍からの白血化4症例においてCAP1遺伝子変異のスクリーニングを直接塩基決定法で行った。本年度の検索では、昨年度の検索で初発時に認めた1塩基変異を同一症例の再発時に認めたが、その他の症例では新規の変異は認められなかった。最終的にCAP1変異はAML初発時に1/289症例(0.3%)、再発時に4/69症例(6.0%)に認められ、4症例のうち3症例は再発時のみに認められた。CAP1変異を認めたAMLの臨床的特徴は、全症例染色体予後中間群で、第一再発後の第二寛解率が低く(1/4症例:25%)予後不良である可能性が示唆された。2.In vitroでのCAP1遺伝子変異の機能解析昨年度作成したCAP1変異を発現するHela細胞を用いてCAP1のアポトーシス誘導時の細胞内局在を検討した。野生型CAP1はStaurosporin(STS)やetoposideにてアポトーシスが誘導されると細胞質からミトコンドリアに移動するが、変異CAP1は細胞質内にとどまることが明らかになった。
3: やや遅れている
骨髄球性腫瘍のおけるCAP1変異のスクリーニングとその臨床的特徴の解析はほぼ終了することが出来た。現在in vitroでのCAP1遺伝子変異の機能解析を行っているが、昨年度AcGFP1ベクター(クロンテック)を用いてCAP1変異を発現させたHela細胞とHEK293T細胞の作成に難渋をしたが、ようやくCAP1変異を安定的に発現する各細胞株を作成することが出来た。現在これらの細胞株を利用し下記の研究を予定している。しかしヒト血球系GM‐CSF依存性細胞株のMO7eとF-36PへのCAP1-GFPの遺伝子導入に関しては、CAP1-GFP を安定して発現する細胞株の作成に難渋をしている。
Hela細胞とHEK293T細胞において変異型CAP1は、STSにてアポトーシスを誘導することが出来ないかを明らかにする。まず各細胞の野生型CAP1に対するshRNAを2か所に設定し、pRNA-U6.1/NeoにてshRNAを導入し、90%以上knockdownされたクローンを作成する。そしてHela細胞に野生型、野生型、野生型/変異型(1:1)のCAP1-GFPを発現させ、STSにて処理を行いアポトーシスの誘導を比較する。ヒト血球系GM‐CSF依存性細胞株のMO7eとF-36PへのCAP1-GFPの遺伝子導入が難渋をしているため、遺伝子導入法の変更を検討している。またヒト血球系IL3依存性細胞株であるTF1に対してもCAP1-GFPの遺伝子導入の検討を行っている。変異型CAP1を安定して発現するヒト血球系サイトカイン依存性細胞株の作成に成功することが出来れば、変異型CAP1に細胞増殖を活性化する機能があるかを明らかにする。またin vivoでの変異型CAP1の細胞増殖活性能を検討するためにNOD SCID NOD.CB17-Prkdcscid/Jマウスに対しての移植実験を行う。
AcGFP1ベクター(クロンテック)を用いてCAP1変異を発現させたHela細胞とHEK293T細胞の作成に難渋をし、その後の機能解析実験になかなか進めなかった。また同様にヒト血球系GM‐CSF依存性細胞株のMO7eとF-36PへのCAP1-GFPの遺伝子導入に関しても、CAP1-GFP を安定して発現する細胞株の作成に難渋をし、その後の機能解析実験になかなか進めなかった。ようやくCAP1変異を安定的に発現するHela細胞とHEK293T細胞を作成することが出来た。次年度でこれらの細胞株を利用し前述の機能解析実験を予定している。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件)
Leukemia.
巻: 27(5) ページ: 1044-1052
1038/leu.2012.317.
血液内科
巻: 67(5) ページ: 651-661