研究課題/領域番号 |
24591413
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
小迫 知弘 福岡大学, 薬学部, 准教授 (40398300)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ATL / SIRT1 |
研究概要 |
ATLは、レトロウイルスであるHTLV-1のCD4陽性T細胞への感染後に起こる単クローン性腫瘍であり、感染後数十年の潜伏期間を経て発症する。一方、SIRT1は、ヒストン脱アセチル化酵素クラスIIIに分類されるサーチュインファミリーに属し、がんや細胞周期及びアポトーシスなどの生命機能に関与している。我々はこれまでに、健常人と比較してATL患者の細胞に、SIRT1タンパクが高発現していることを明らかにした。そこで本研究では、白血病細胞における新規SIRT1阻害薬及びSIRT1を標的とする薬剤の影響について検討した。 SRT1720の処理により、健常人のPBMCと比較して有意に白血病細胞株の細胞生存率は濃度依存的に抑制されると共に、アポトーシス細胞も増加した。特に、S1T及びHL60細胞において顕著であった。また、SIRT1をノックダウンさせたJurkat細胞において、SRT1720処理による細胞生存率は、ノックダウンしていない細胞と比較して有意な差が認められなかった。一方、ノックダウンしていないMT-2細胞と比較して、ノックダウンしたMT-2細胞におけるSRT1720の低濃度処理による細胞生存率は低下した。以上の結果より、Jurkat細胞でのSRT1720処理による細胞生存率の低下はSIRT1を介さないが、MT-2細胞においてSRT1720は、SIRT1非依存的に細胞生存率を低下させることが示唆された。また、新規SIRT1阻害薬であるNCO-04は、白血病細胞のアポトーシスを誘導したことから新規SIRT1阻害剤は、白血病治療に有用であることが示唆された。今後、SRT1720によるSIRT1非依存的な細胞増殖抑制効果の解明及びNCO-04によるアポトーシス機構の解明が、ATLの新規治療の可能性に繋がると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の2つの今年度の目標に対して、予定通り遂行することができたため。 目標①:白血病細胞株及びATL細胞株における新規SIRT1阻害剤によるアポトーシス誘導効果 目標②:白血病細胞株及びATL細胞株におけるAMPK活性化剤のアポトーシス誘導効果
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今後の研究の推進方策 |
目標①白血病細胞株及びATL細胞株における新規SIRT1阻害剤によるアポトーシス誘導効果:JPX-9細胞株(CdCl2でHTLV-1 Taxタンパクが誘導される)においてCdCl2によりHTLV-1 Taxタンパクを誘導し、SIRT1タンパク発現に対する影響を検討する。また、Taxタンパク誘導時、非誘導時におけるNAD+と新規SIRT1阻害剤添加によるカスパーゼとNF-κBの活性化及び細胞周期に対する影響を検討し、SIRT1制御によるアポトーシスの誘導におけるHTLV-1 Taxタンパクの関連性を検討する。 目標②白血病細胞株及びATL細胞株におけるAMPK活性化剤と阻害剤のアポトーシス誘導効果: 白血病細胞株及びATL関連細胞株株における、AMPK活性化剤と阻害剤による抗ウイルス効果を、HTLV-1プロウイルス量の測定により解析する。 目標③ATL細胞株のエネルギー代謝経路(解糖系及び酸化的リン酸化)の解析: 白血病細胞株及びATL関連細胞株が、グルコース依存性であるか脂肪酸・アミノ酸依存性であるかを検討するため、グルコース及び血清有無の条件下で培養後、アポトーシス細胞をAnnexin Vを指標に測定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の繰越金(297円)をあわせて、以下の計画で研究費を使用する。 ウエスタンブロット用試薬: SIRT1、AMPK、NF-κB関連タンパクの解析のために抗SIRT1、phospho-SIRT1、AMPK、phospho-AMPK、NF-κB、p-NF-κB、IκB、p-IκB抗体(Cell Signaling) を購入する。細胞質と核を分画するためにNuclear and Cytoplasmic Extraction Reagent (Thermo) を購入する。Can Get SignalR Immunoreaction Enhancer Solution (TOYOBO) を購入する。 細胞培養消耗品:RPMI培地、プラスティックピペット・チューブ、培養フラスコ・プレート、ピペットマン、ウシ血清を購入する。 アポトーシス測定関連試薬:カスパーゼ活性を測定するためにFluorometric Assay Kit (MBL)、抗cleaved caspase-3, 7, 9抗体 (Cell Signaling) を購入する。BrdU検出キット(BD) 、Annexin-V FITC (MBL) を購入する。 グルコース・乳酸測定試薬:Glucose Assay Kit 、Lactate Assay Kit II (BioVison) を購入する。 旅費:研究成果を日本癌学会総会とASH Annual Meeting (アメリカ血液学会) で報告する。研究計画打ち合わせ及び成果報告を京都府立医科大学(京都市)で行う。
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