成人T細胞白血病(ATL)は、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)の長期潜伏後発症し、その平均発症年齢は60歳である事から、年齢・老化との関連も興味深い予後不良の悪性疾患である。一方、SIRT1は長寿遺伝子として注目されており、脱アセチル化した領域の遺伝子発現を低下させる事から、細胞内エネルギー代謝、癌化に至るまで多くの生命機能に関与している。また、白血病細胞をはじめ多くのがん細胞は、細胞内エネルギー産生をグルコースに依存しており、アポトーシスからの回避は、脂肪酸代謝に依存している。申請者は、これまでにHTLV-1非感染者と比較しATL患者においてSIRT1が高発現している知見を得ている。本研究では、ATLにおける新規SIRT1阻害剤によるアポトーシスの誘導効果を検証する。更に、ATL細胞のエネルギー代謝経路を解析することにより、エネルギー代謝を標的とした白血病及びATL治療応用への可能性を検討した。 我々が開発した新規SIRT1阻害剤は、白血病細胞株及びATL患者細胞の細胞増殖を抑制し、アポトーシスを誘導した。従って、我々の開発した新規SIRT1阻害剤が、ATLの治療に応用されるための基礎データが得られた。従って、本研究は、ATLの予後を改善する治療法開発の基盤になると期待される。
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