研究課題
平成26年度は、ヒト化NOJマウスのHTLV-1感染方法の改善を行った。MT-2細胞を10GyのX線で処理することで、in vitroでは少なくともX線処理後5日間は細胞増殖することなく生存し続け、その後死滅することがわかった。一方、マウス体内では、X線処理MT-2細胞は少なくとも移植後2週間には検出されないことがわかった。この方法による感染マウスではMT-2細胞移植後2~4週間で末梢血中にHTLV-1感染ヒトリンパ球の存在が確認された。この結果から、改良したHTLV-1感染ヒト化NOJマウスは高頻度にATL症状を発症している可能性が考えられる。また、各臓器を解析したところ、肝臓、脾臓および骨髄においてHTLV-1感染CD4+CD25+ T細胞が存在した。特に、脾臓は有為に体積が増加しており、HTLV-1感染CD4+CD25+ T細胞の集積が見られた。さらに、非感染ヒト化マウスの脾臓では観察されない細胞が多数存在することを示唆する結果が得られた。マウスでは成体においても脾臓は造血組織であり、造血幹細胞を支持するニッチが存在することが知られている。このことから、HTLV-1感染ヒト化NOJマウス脾臓から得られた結果は、ATL幹細胞のニッチは脾臓に存在することを示唆する。さらに平成26年度構築した高頻度にATL様病態を示すモデルマウスを用いて、HTLV-1感染細胞を標的とした新規HTLV-1薬剤候補の効果検証を行った。その結果、この薬剤候補は1)感染マウス末梢血におけるウイルス量の抑制、2)感染マウスにおけるヒトリンパ球数増加の抑制、3)感染マウス末梢血で増加したヒトリンパ球数の減少、4)感染マウスの脾臓の肥大抑制、などの効果があることが検証できた。このように、本研究で構築したHTLV-1感染ヒト化マウスは新規薬剤の効果検証においても有用なツールとなることが期待される。
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J. Clin. Microbiol.
巻: 53 ページ: 587-596
10.1128/JCM.02254-14. Epub 2014 Dec 10.