研究課題
患者由来の人工多能性幹細胞(iPS細胞)由来の血液細胞は,輸血,ガン免疫療法,造血幹細胞移植による慢性血液疾患の根治治療などへの応用が期待されている.しかし,iPS・ES細胞を試験管内で造血幹細胞へ分化誘導することは,極めて困難であった.我々は,マウス骨髄造血幹細胞を体外増幅できる転写因子Lhx2を用いることにより,マウスES・iPS細胞から長期骨髄再建能を有する造血幹細胞様の細胞を試験管内分化誘導することに成功した.この造血幹細胞様細胞は,赤血球,血小板,ミエロイド細胞,B細胞への分化能を有していたが,T細胞へは分化しなかった.そこで,Lhx2により誘導された造血幹細胞様細胞において,Lhx2の発現を不活性化すると,T細胞へ分化することを新たに見出した.以上の結果から,Lhx2の発現をコントロールすることにより,血液細胞系における全分化能を有する造血幹細胞様細胞がマウスES細胞から得られることが判明した.次に,ヒトiPS細胞から,Lhx2により,造血幹細胞様細胞が得られるかどうかの検討をおこなった.まず,現在報告されているいくつか手法を用いてヒトiPS細胞から血液細胞への分化誘導をおこなった結果,分化誘導効率が低いことが判明した.そこで,血液細胞への効率的な分化誘導法の開発をおこなった.その結果,ヒトiPS細胞から血液細胞への分化は,GSK3β阻害剤の一過的処理により劇的に改善することを新たに見出した.そこで,次に,Lhx2の発現を制御できるヒトiPS細胞を樹立し,分化誘導をおこなったが,ヒトでは,Lhx2は造血幹細胞様細胞を誘導することができなかった.マウスの場合,Lhx2の発現を誘導する分化段階が,造血幹細胞様細胞の誘導に重要であることを新たに見出している.今後,ヒトiPS細胞の分化誘導においてもLhx2の発現開始時期の検討をおこなう予定である.
公益財団法人・東京都医学総合研究所・幹細胞プロジェクトホームページ(http://www.igakuken.or.jp/stem-cell/)
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