研究課題
基盤研究(C)
当研究グループは、マウスRHOF cDNA クローンの単離、ならびにそのcDNAをプローブに用いて129SVJマウスのゲノムライブラリーをスクリーニングすることにより第1エクソンを含むマウスRHOF遺伝子クローンの単離した。これをもとに既にネオマイシン耐性遺伝子とチミジンキナーゼ遺伝子によるポジティブネガティブセレクション用のターゲティングベクターmRHOF KO/pNTを作製した。ターゲティングベクターをES細胞にエレクトロポレーションにより導入し、G-418入りES培地により選択培養し、相同組換え体を単離、同定した。これをC57BL/6Jマウスより採取した胚盤胞に注入し、回復を待って仮親の子宮に移植した。仮親から生まれたターゲットアレルを持つキメラマウスをCAG-FLPe Tgマウスと交配することによりコンディショナル(flox)アレルを持つマウスを得る事が出来た。floxアレルを持つマウスとCAG-Cre Tgマウスと交配することにより全組織でRHOFを欠失したマウスを得る事が出来た。RHOF欠損マウスはメンデルの法則に従い出生し、胎生致死ではないことが示唆された。現在血液系の表現型について詳細な検討を行っている。
2: おおむね順調に進展している
当研究グループは既に各種ベクターの構築と導入効率の検証のみならず、RHOFノックアウトマウスの作成に成功しており、研究計画書の平成24年度の目標は概ね達成出来ているものと考えられる。アフィニティ精製法も確立しており迅速な研究推進が可能である。研究分担者の松下の所属する名古屋大学医学部附属病院輸血部では過去に多くの遺伝子改変マウスを作製、解析した経験があり迅速な研究の進行が可能である。研究分担者の天野の所属する名古屋大学大学院神経情報薬理学講座では多年にわたりRho family GTPaseの研究に従事しており、微量蛋白質を網羅的にマススペクトロメトリーにて同定可能なシステムを完成させている。以上のことから研究はおおむね順調に進展していると判断される。
RHOFコンディショナルノックアウトマウスの解析:①免疫系の検討:野生型とRhoF欠損マウスで免疫器官(胸腺、脾臓、リンパ節)の形態をHE染色で比較検討し、構造変化の有無を調査する。フローサイトメトリーによりリンパ球分画を調査する。②造血系の検討:野生型とRhoF欠損マウスで骨髄、末梢血の形態を比較検討する。また長期飼育を行い加齢に伴う造血器腫瘍発症の有無を検討する。③MEFを用いたフィロポディアの解析:ノックアウトマウスと野生型マウスからMEF(mouse embryonic fibroblast)を採取し、これを用いてtime-lapse法を用いた細胞遊走定量、wound healing assayを行い、細胞運動能、細胞接着能を比較検討する。ノックアウトマウス由来のMEFではフィロポディアの減弱が見られ、また新たな細胞接着斑の形成に乏しく、細胞接着能、運動能も低下していることが予想される。さらにMEFを用い細胞増殖、アポトーシス定量を行う。アフィニティクロマトグラフィーを用いたRhoFの新規エフェクター探索:マウス表現型の解析とともに、Dia1/2以外の新規RhoFエフェクターの同定を試みる。研究代表者らは既にGST-RhoF Q77L, T33N蛋白を精製し、血小板からの細胞質画分、膜画分の精製、アフィニティクロマトグラフィー→LC/MS/MSにより結合蛋白を同定する系を立ち上げており、迅速な研究の遂行が期待できる。
マウス実験、蛋白生化学的実験のための物品費、旅費、その他に使用予定である。
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