研究課題/領域番号 |
24591416
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
勝見 章 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (80378025)
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研究分担者 |
松下 正 名古屋大学, 医学部附属病院, 教授 (30314008)
天野 睦紀 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90304170)
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キーワード | Rhoファミリー / リンパ球 / 分化 / ノックアウト |
研究概要 |
RhoFは主に血球、腸管に発現するRhoファミリーGTPaseであり、細胞内ではfilopodia (細胞先端のマイクロスパイク状の構造)内に存在することが知られている。Mycosis fungoides等のTリンパ球性リンパ腫の一部でRhoF遺伝子の欠失が報告されているが、生体内での機能は不明である。本研究ではRhoFノックアウトマウスを作成し、その表現型解析を通して生体内におけるRhoFの機能を解明することを目的とする。本研究グループはマウスRhoF cDNAクローンの単離、それをプローブに用いてマウスRhoF遺伝子クローンを単離した。これをもとにターゲティングベクターmRhoF KO/pNTを作製した。ターゲティングベクターをD3 ES細胞に導入し、G-418入りのES培地により選択培養し、相同組換え体を単離・同定した。これをC57BL/6Jマウスより採取した胚盤胞に注入し、回復を待って仮親の子宮に移植した。仮親から産まれたキメラマウスをCAG-Creマウスと交配することによりRhoFノックアウトマウスを作製した。RhoF欠損マウスはメンデルの法則に従い出生し、胎生致死でないことが判明した。末梢血液細胞数、血小板機能等は野生型と差がなかった。胸腺、脾臓等を解析した結果、脾臓の辺縁領域の低形成が認められた。RhoFノックアウトマウスでは脾臓におけるBリンパ球の分化に異常が見られる可能性が示唆された。これは他のRho family GTPaseであるRhoA, Cdc42のB細胞特異的ノックアウト、造血細胞のみに発現するRac2のノックアウトに類似した所見であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究グループは既に、全組織でのRhoF 欠損マウスの作製に成功している。RhoF欠損マウスはメンデルの法則に従い出生し、胎生致死でないことが判明した。末梢血液細胞数、血小板機能等は野生型と差がなかった。胸腺、脾臓等を解析した結果、RhoF欠損マウスでは脾臓の辺縁領域 (marginal zone) の低形成が認められた。RhoFが脾臓におけるBリンパ球の分化関与している可能性が示唆された。現在長期飼育による悪性腫瘍発症の有無につき現在検討中である。また 廃棄血小板を試料としてエフェクター探索用のアフィニティクロマトグラフィー法も確立しており、研究計画書の平成25年度の目標は概ね達成できているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
RhoF欠損マウスの解析: 野生型とRhoF欠損マウスの免疫器官(胸腺、脾臓、リンパ節)の形態の差異を免疫染色により詳細に検討する。さらにTNP-LPSなどの抗原刺激に対する抗体産生能、種々のケモカインに対するB細胞の遊走能等を野生型と欠損マウス間で比較検討する。 アフィニティクロマトグラフィーを用いたRhoFの新規エフェクター探索: マウス表現型の解析とともに、mDia1/2以外の新規RhoFエフェクターの同定を試みる。研究代表者らは既にGST-RhoF Q71L, T33N蛋白を精製し、血小板からの細胞質分画を用いたアフィニティクロマトグラフィー、LC-MS/MSにより結合蛋白を同定する系を確立しており、迅速な研究の遂行が期待できる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度において、RhoF欠損マウスの表現型に関する実験は、すべて所属機関ならびに国立長寿医療研究センター研究所に設置されている機器および専門オペレーターによりデータを得ることができ、経費の削減ができたため。 平成26年度は所属機関および国立長寿医療研究センターにおいてマウス免疫器官の免疫染色、抗体産生能、遊走能測定等の研究のために予算執行をしていく。また主に所属機関においてアフィニティクロマトグラフィーを用いて新規RhoFエフェクターの同定を試みる。
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