研究課題/領域番号 |
24591418
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
高見 昭良 愛知医科大学, 医学部, 教授 (80324078)
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キーワード | 1塩基多型 |
研究概要 |
移植成功率が最も高いドナーを選び移植後合併症を予測し予防する「テーラーメード型同種造血幹細胞移植」の確立を目指し、非血縁者間骨髄移植患者・ドナーの免疫調整遺伝子多型解析を行った。平成25年度は18 SNP (ATG16L1、CCL2_1、CCL2_2、CCL2_3、CCR5、CCR6、CD53、IL23R_1、IL23R_2、IL12R_3、IL23RIL12RB2_1、IL23RIL12RB2_2、NLRP3_1、NLRP3_2、PTPN22、TLR1、TLR2、TLR4)をTaqMan SNP遺伝子多型解析法で決定し、全生存(OS)、移植関連指導(TRM)、再発(Rel)、急性・慢性移植片対宿主病(GVHD)との関連を後方視的に解析した。OSに関連するSNPは、患者側がCCL2_2、CCL2_3、CD53、IL23RIL12RB2_1、IL23RIL12RB2_2、NLRP3_1、PTPN22、ドナー側がPTPN22であった。TRMは、患者側がCCR6、PTPN22、ドナー側がCCL2_2、IL23R_1、IL23R_2、NLRP3_2、PTPN22、TLR4。Relは、患者側がIL23RIL12RB2_2、ドナー側がIL23R_1、IL23R_2。2-4度急性GVHDは、患者側がTLR2、ドナー側がCCR6、IL23R_3、TLR2。慢性GVHDは、患者側がCCR5_2、IL23R_3、TLR2、TLR4、ドナー側がCCL2_1、CCL2_3、IL23R_1、IL-23R_2、PTPN22。以上から、複数のSNPが独立して移植後転帰に影響することが示された。これまでCD53、NLRP3_1、PTPN22各SNPと移植後転帰の関連を報告しており、矛盾しない結果であった。このように複数の免疫調整遺伝子SNP情報をもとにドナー選択や移植後合併症予防・治療を行えば、同種造血幹細胞移植成績は大幅に向上すると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、(1) 同種造血幹細胞移植患者・ドナーを対象に、免疫調整遺伝子多型を決定し、移植成績への影響を前・後方視的に解析すること、(2) 関連を認めた免疫調整遺伝子多型の機能を実験的に検証することにある。平成25年度の研究計画は、(1) 後方視的検討として非血縁者間骨髄移植患者・ドナーの免疫調整遺伝子多型を決定し、臨床データとの関連性を統計学的に解析する、(2) 関連がみられた免疫調整遺伝子は機能解析を行う、(3)前方視的検討の準備を行う、これらの3点であった。実際に複数の免疫調整遺伝子多型解析を行い、複数の遺伝子多型が同種骨髄移植の転帰に有意な影響を持つことを証明した。以上より、研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
臨床解析として、骨髄バンクへ協力を要請し、解析対象をHLA不一致例へ広げ、非血縁者間同種骨髄移植患者・ドナーを対象とした後方視的検討を行う。試料・臨床データは日本骨髄移植推進財団を通じて入手する。日本骨髄移植推進財団から入手可能な当該サンプル数は約6,000ペアである。免疫調整遺伝子多型解析結果を、生着・GVHD・感染症・再発・生存を含む臨床データと比較し、多変量解析も含め検討する。さらに、平成25年度と同様に、臨床解析で臨床的意義が確認された多型遺伝子を対象に機能解析(転写因子、マイクロRNAとの結合性や蛋白機能の確認)を行う。並行して、後方視的結果に基づき、前方視的検討(臨床試験)の準備を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度研究費を次年度に持ち越した理由は、前年度に購入した消耗品が平成25年度にも使用出来たこと、学会出張の機会が限られていたことにある。平成26年度は、解析サンプル数が多く、平成25年度より消耗品にかかる費用が増える。 多数の解析サンプルに対し、臨床的意義が証明されたSNPの機能解析(転写因子、マイクロRNAとの結合性や蛋白機能の確認)を円滑に進める費用が必要となる。さらに、成果を発表するための旅費として、使用する見込みである。
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