研究実績の概要 |
好塩基球は、2型免疫反応のエフェクターとして、機能していることが知られている。アレルゲンとIgE, IgGによる刺激によって、好塩基球はヒスタミンなどの化学伝達物質の放出と、IL-4,IL-6,IL-13等の2型免疫応答に重要なサイトカインを産生する。本研究課題では抗体以外の受容体やセンサー分子とそのシグナル伝達経路について解析を行った。特にシステインプロテアーゼであるパパインやATPなどの自然炎症性分子によって培養好塩基球がIL-4等のサイトカインを分泌することに注目し解析を行った。このIL-4産生には、プロテアーゼセンサーによる認識とIL-3によるサイトカイン産生シグナル伝達の増強作用の2つの経路が重要であった。FcRγ欠損好塩基球では、パパインによってIL-4がまったく誘導されないことから、FcRγ結合分子がセンサーとして機能していることが示唆された。この活性にはプロテアーゼ活性が必須であることから、パパイン感受性分子CD8αとFcRγの融合分子を作成しFcRγ欠損好塩基球に発現させ、IL-4産生を調べた。その結果、パパインによって少量ではあるがIL-4が産生されたことから、受容体分子の切断が重要な役割を果たしている可能性が示唆された。IgE受容体であるFcεRIαは、パパインによって切断されず、他の受容体の可能性が示唆された。また、パパインにより誘導される遺伝子群の中で、IL-4,CCL2以外の多くの分子(IL-1βなど)はFcRγやプロテアーゼ活性に非依存的に誘導されることから、他の受容体を介した免疫応答シグナルも好塩基球の生理活性には重要な役割を果たしていると考えられる。インフラマソーム構成分子であるASCの遺伝子欠損好塩基球では、パパインによるIL-4産生は半分に低下していたことから、何らかのクロストークがあると考えられた。
|