研究課題/領域番号 |
24591421
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山本 晃士 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (90362251)
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研究分担者 |
小嶋 哲人 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40161913)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 老化 / 血栓 / 菌体毒素 / ストレス / 脂肪細胞 / 腎糸球体 / 線溶 |
研究実績の概要 |
老齢個体における易血栓性のメカニズムのひとつとして、血栓溶解阻害因子であるplasminogen activator inhibitor-1 (PAI-1) の発現異常が関与しているかどうかを解明するため以下の実験を行った。血栓形成刺激としてのエンドトキシン投与および拘束ストレス負荷を、若年齢(8週齢)と老齢(12ヶ月齢)のPAI-1欠乏マウスおよびほぼ同齢の野生型マウスに対して行った。エンドトキシンはそれぞれ50ugを腹腔内投与し、拘束ストレス負荷は20時間で行った。まず、エンドトキシン投与8時間後の各マウスにおいて腎糸球体内および脂肪組織内フィブリン血栓沈着を検索したところ、若年個体、老齢個体いずれにおいても、PAI-1欠乏マウスに比較して野生型マウスで有意に多量のフィブリン沈着を認めた。またPAI-1欠乏マウスと野生型マウス間でのフィブリン沈着量の差は、老齢個体においてより顕著であった。一方、20時間拘束ストレス負荷後の若年個体では、PAI-1欠乏マウス、野生型マウスのいずれにも腎糸球体内フィブリン沈着をほとんど認めなかったが、老齢個体では、PAI-1欠乏マウスに比較して野生型で有意に多いフィブリン血栓沈着を認めた。以上の結果より、エンドトキシン投与および拘束ストレス負荷後の組織内微小血栓形成には、負荷後のPAI-1発現動態が強く関与していると考えられ、またその関与の程度は加齢依存的に増大することが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自然加齢マウスを用いて行った血栓形成誘発実験の結果から、老化個体における血栓準備状態および血液流動性維持破綻機構につき、線溶阻害因子PAI-1の発現亢進を主体とする血栓溶解能の低下が主な原因となっていることが示唆された。しかし、老化モデルマウスとして使用予定であったKlotho mouseが供給困難なため入手できず、老化特有の組織変化や血栓傾向と、PAI-1発現動態との間の関連性を追究することはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
老化モデルマウスとして使用するKlotho mouseの入手に努める。そして入手後はすみやかに分子生物学的および病理組織学的解析を進め、研究目的の達成に向けて精力的に研究を遂行していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に使用予定であった老化モデルマウス(Klotho mouse)が供給困難なため入手できず、予定していた実験を行うことができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
老化モデルマウス(Klotho mouse)の購入費に充てるとともに、当該マウスを使った分子生物学的および病理組織学的解析のための試薬購入に充てる。また、国内および海外での関連学会にて、研究の遂行に必要な情報の収集と研究成果の発表を行いたく、その旅費・参加費に使用する。さらに、研究成果を論文化することができた場合には、その英文校正費、投稿費、別刷印刷費などに使用する。
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