研究課題/領域番号 |
24591422
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
冨山 佳昭 大阪大学, 医学部附属病院, 講師 (80252667)
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研究分担者 |
柏木 浩和 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10432535)
田所 誠司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80403062)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | インテグリンαIIbβ3 / CMK / inside-out signaling / talin-1 / kindlin-3 |
研究概要 |
血小板インテグリンαIIbβ3は血栓形成の中核をなすタンパク質であり、その機能は病的環境においてダイナミックに変化しており、ポジティプあるいはネガティブに制御されている。本研究は、申請者らが新たに確立したCMK細胞システムを用いて、血小板インテグリン機能をポジティプあるいはネガティブに制御する分子に関して、その分子機構の詳細を明らかにすることを目的としている。 αIIbβ3はアゴニスト刺激によるinside-outシグナルにより瞬時に活性化型に変化し血小板凝集を惹起する。最近αIIbβ3活性化にはtalin-1およびkindlin-3が必須であることが明らかとなってきた。現在までCHO細胞に異所性に発現させたαIIbβ3が用いられていたが、αIIbβ3CHOはアゴニスト刺激に反応せず、CHO細胞にはkindlin-3を発現していない等の欠点を有する。この欠点を補い、αIIbβ3のより生理的な解析を行うため内因性αIIbβ3を発現するヒト巨核球系細胞株CMKを用いた実験系を構築した。ダイナミックに変化するαIIbβ3活性化をて的確に検出するため、PAC1の結合速度(initial velocity assay)を用いて解析すると、CMKではPARIペプチドによる刺激によりαIIbβ3が一過性に活性化する。 今年度の成果として、RNAiにてCMKにおける内因性talin-1やkindlin-3をノックダウンすると、それぞれのノックダウン細胞において、PAR1により惹起されたαIIbβ3 の活性化は著しく障害されること、CMK細胞系はタリンのヘッドドメイン(THD)を強制発現さるのみでは活性化せず、血小板と同様にアゴニスト刺激が必要であることを明らかにした。さらに種々のtalin-1変異体を発現させαIIbβ3 活性化におけるtalin-1の機能部位を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、申請者らが新たに確立した血小板インテグリンを生理的に活性化しうるCMK細胞システムを用いて、血小板インテグリン機能をポジティプあるいはネガティブに制御する分子に関して、その分子機構の詳細を明らかにすることを目的としている。本年度では、インテグリンαIIbβ3の活性化の分子機構の詳細を明らかにする予定であった。CMKは巨核球系の細胞株のため、遺伝子のノックダウンがCHO細胞に較べると困難であり、またその形質の維持にも熟練を要した。一方、過剰発現系での解析は極めて順調であり、αIIbβ3の活性化に関してtalin-1のautoinhibitionのメカニズム、talin-1のfull-length、talin head domain(THD)、さらにはこれらの変異体を発現させることにより、その分子機構の詳細を明らかにでき、従来のαIIbβ3CHO細胞系との相違を明らかにすることに成功した。具体的には汎用されているCHO細胞系ではTHDの強制発現でαIIbβ3 が活性化するのに対し、申請者のCMK細胞系ではTHDの強制発現のみではαIIbβ3は活性化せず、アゴニスト刺激が必要であった。興味深いことにCMKにおいてαIIbβ3の活性化はTHDにより増強された。この増強作用は、kindlin-3やfull-length talinでも同様に観察されたことが新たに明らかにできた。 以上の成果に加えkindlin-3のノックダウンによりαIIbβ3の発現が減弱すること、この減弱はkindlin-3の強制発現により改善する知見も新たに見出した。 上記にように、CMK実験系は極めて優れた実験系であり予想以上の成果が挙がっている。本実験系によりαIIbβ3活性化の分子機構をより詳細に解析することが可能になると考えられ、あらたな血小板機能制御法の開発に寄与することが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度において申請者が開発したCMK細胞システムを用いて、ダイナミックなインテグリンαIIbβ3の活性化機構においてtalin-1およびkindlin-3の分子機構の詳細に関して大きな成果を達成できた。今後においては、このユニークな実験系を中心にαIIbβ3活性化機構を解明していく予定である。血小板およびCMK細胞系では、インテグリンαIIbβ3活性化に関しては、アゴニスト刺激が必須である。さらに血小板ではその活性化が持続するのに対し、CMKでは活性化は一過性であり持続しない。一方従来のCHO細胞系では、インテグリンαIIbβ3の活性化はアゴニスト刺激には反応できず、伝達経路が未完成であると考えられる。さらにCHO細胞では、THDの過剰発現にみによっても容易にαIIbβ3は活性化するため、活性化の抑制系も未発達であると考えられる。言い換えると、これら細胞系によるαIIbβ3活性化の分子機構の差違は、活性化維持機構の差、活性化抑制分子の差、に起因すると考えられる。今後はこれらの差違に注目して、αIIbβ3活性化に重要な分子に関する解析を推進する。 具体的には、活性化維持機構としてP2Y12およびRap1B、活性化抑制分子としてα-actinin、に注目してCMK細胞系を中心とした解析を行う。さらにRap1Bドミナントネガティブノックインマウス(Rap1B DN)のを作製とともにその繁殖を行っているが、ホモマウスは胎生致死であり繁殖できない。そのためRap1B DNのヘテロマウスを用いて出血時間や血栓形成モデルを用いてin vivo解析を行う予定である。 このように、本研究では申請者の開発したCMK細胞システムを基盤としてインテグリンαIIbβ3の活性化機構の詳細をポジティブおよびネガティブの観点よりさらに解明し、新たな血小板機能制御法の開発をめざす。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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