新規表面抗原ＥＳＡＭを指標とした造血幹細胞の生理的特性の解析と白血病診断への応用

2014 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 24591423
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 横田 貴史 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60403200)
• 研究分担者: 金倉 譲 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20177489) ; 織谷 健司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70324762)
• 研究期間 (年度): 2012-04-01 – 2015-03-31
• キーワード: 造血幹細胞 / ヒト白血病

研究実績の概要

申請者らは、血管内皮関連抗原であるendothelial selective-adhesion molecule (ESAM)が、造血幹細胞のマーカーとして発生期から老年期まで有用であり、また抗癌剤や放射線による造血障害によって惹起される造血幹細胞の活性化に伴って発現レベルが顕著に上昇することを、マウスを用いた実験系で明らかにしてきた。本研究では、定常状態および骨髄障害時の造血幹細胞におけるESAMの生理的機能を明らかにし、ヒトの造血幹細胞や白血病細胞の研究にも応用可能かどうかを明らかにすることを目的に解析を行った。特に本年度は、ヒトの白血病細胞におけるESAMの発現と腫瘍の性質の関連に関する解析を進めた。白血病細胞株を用いた検討では、赤芽球・巨核球系の腫瘍細胞がESAM陽性、リンパ球性白血病細胞株はESAM陰性、骨髄性白血病細胞株にはESAM陽性・陰性両方が認められた。ヒト急性骨髄性白血病の初発症例においてはESAMの発現は一様でなく、同一の病型（例えば急性前骨髄性白血病）でも陽性の症例と陰性の症例が存在した。ESAMの発現と治療反応性・予後との関連について、現在解析中である。興味深いことに、ESAM陰性の急性骨髄白血病細胞株であるKG1aを免疫不全マウスに移植し、生着して白血病を発症させることを繰り返すと、KG1aの腫瘍活性の増加とともにESAMの陽性化が観察できた。これらの結果は、ESAMが急性白血病の系統診断においてに有用であるのみならず、骨髄性白血病において腫瘍細胞の性質を評価する上でも有用である可能性を示唆している。今後さらに白血病細胞におけるESAM発現の意義について解析を進める予定である。

研究成果

• [雑誌論文] Estrogen-inducible sFRP5 inhibits early B-lymphopoiesis in vivo, but not during pregnancy (2015)
  • 著者名/発表者名: Takafumi Yokota, Kenji Oritani, Takao Sudo, Tomohiko Ishibashi1, Yukiko Doi, Yoko Habuchi, Michiko Ichii, Kentaro Fukushima, Daisuke Okuzaki, Kazuma Tomizuka, Kengo Yamawaki, Makoto Kakitani, Akihiko Shimono, Eiichi Morii, Paul W. Kincade, Yuzuru Kanakura
  • 雑誌名: European Journal of Immunology 巻: in press ページ: in press
  • DOI: 10.1002/eji.201444939
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Guest editorial: Molecular mechanisms of lymphocyte development: recent findings (2014)
  • 著者名/発表者名: Takafumi Yokota
  • 雑誌名: International Journal of Hematology 巻: 100 ページ: 218-219
  • DOI: 10.1007/s12185-014-1645-4
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] Role of tissue-specific AT-rich DNA sequence-binding proteins in lymphocyte differentiation (2014)
  • 著者名/発表者名: Takafumi Yokota, Yuzuru Kanakura
  • 雑誌名: International Journal of Hematology 巻: 100 ページ: 238-245
  • DOI: 10.1007/s12185-014-1602-2
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] MS4A3 Marks Early Myeloid Differentiation in Human Hematopoiesis (2014)
  • 著者名/発表者名: Tomohiko Ishibashi, Takafumi Yokota, Yusuke Satoh, Takao Sudo, Yukiko Doi, Natsuko Fujita, Yasuhiro Nagate, Yuri Hamanaka, Keiko Matsui, Akira Tanimura, Michiko Ichii, Norimitsu Saitoh, Sachiko Ezoe, Hirohiko Shibayama, Kenji Oritani, Yuzuru Kanakura
  • 学会等名: American Society of Hematology
  • 発表場所: San Francisco (USA)
  • 年月日: 2014-12-08
• [学会発表] ESAM on hematopoietic cells is essential for recovery of erythropoiesis after bone marrow injury (2014)
  • 著者名/発表者名: Takao Sudo, Takafumi Yokota, Daisuke Okuzaki, Michiko Ichii, Tomohiko Ishibashi, Tomomi Isono, Yukiko Doi, Masako Takemoto, Yoko Habuchi, Akira Tanimura, Sachiko Ezoe, Hirohiko Shibayama, Kenji Oritani, Yuzuru Kanakura
  • 学会等名: 第76回日本血液学会学術集会
  • 発表場所: 大阪国際会議場（ 大阪市 ）
  • 年月日: 2014-11-01
• [学会発表] Functional analysis of a chromatin-remodeling protein in early lymphoid differentiation (2014)
  • 著者名/発表者名: Yukiko Doi, Takafumi Yokota, Akira Tanimura, Norimitsu Saitoh, Michiko Ichii, Sachiko Ezoe, Hirohiko Shibayama, Kenji Oritani, Yuzuru Kanakura
  • 学会等名: 第76回日本血液学会学術集会
  • 発表場所: 大阪国際会議場（ 大阪市 ）
  • 年月日: 2014-11-01
• [学会発表] Endothelial antigen ESAM marks human hematopoietic stem/progenitor cells in diverse sources (2014)
  • 著者名/発表者名: Tomohiko Ishibashi, Takafumi Yokota, Michiko Ichii, Takao Sudo, Yukiko Doi, Natsuko Fujita, Yasuhiro Nagate, Yuri Hamanaka, Keiko Matsui, Akira Tanimura, Norimitsu Saitoh, Sachiko Ezoe, Hirohiko Shibayama, Kenji Oritani, Yuzuru Kanakura
  • 学会等名: 第76回日本血液学会学術集会
  • 発表場所: 大阪国際会議場（ 大阪市 ）
  • 年月日: 2014-10-31
• [図書] Annual Review 血液 2015 (2015)
  • 著者名/発表者名: 横田貴史
  • 総ページ数: 18
  • 出版者: 中外医学社