同種造血幹細胞移植は、移植片対白血病効果(GVL)により白血病に治癒をもたらす治療法として確立しているが、致死的合併症である移植片対宿主病(GVHD)は今日なお克服すべき課題である。 まず、急性GVHDにおいて、抗癌剤や放射線による組織障害によって放出される核内蛋白質HMGB-1が、炎症メディエーターとして免疫担当細胞に発現しているRAGE に作用する結果、GVHDが増悪することを、マウスモデルを用いて明らかにする目的で以下の実験を行った。ドナーにB6、ホストにBALB/cを使ったマウスGVHDモデルを作成した。血清中のHMGB-1が移植後の障害により血中に放出されるかを経時的に測定した結果、同種移植後7日目には他の群に比べ、有意差をもってHMGB-1が上昇しており、免疫反応による組織障害を反映したと考えられた。次に、HMGB-1の受容体であるRAGEを欠損したRAGE KOマウスをレシピエントに使用し急性GVHDの発症を野生型WTと比較した。RAGE KOマウス群では、WTと比較しても有意に生存率は低い傾向を示した。GVHDスコア、体重減少と合わせてKO群でWTより強い同種免疫反応が生じている可能性があると考えられた。 さらに抗HMGB1抗体投与により急性GVHDの減弱及び生存率の低下を認めた。HMGB-1 ・RAGEの系がGVHDに関与している可能性が示唆された。 次に慢性GVHDにおけるPDL1が果たす役割について研究し、組織PDL1の発現低下がドナーT細胞の活性化につながることを明らかにした。PDL1のレセプターであるPD1に対するアゴニスト抗体により慢性GVHDの軽減につながった。また、Th17細胞とTh1細胞が活性化していた。さらにp40抗体によりTh17細胞とTh1細胞の活性化を抑制することで慢性GVHDの軽減につながるとことが明らかとなった。
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