研究課題
基盤研究(C)
がん化学療法後のB型肝炎ウイルス(HBV)再活性化は、HBs抗原陽性例だけでなく、HBV既往感染例からも起こる(de novo B型肝炎)ことが判明しており、とくにリツキシマブ併用化学療法がリスク因子であることが報告されてきた。平成25年5月8日現在(本研究開始10か月時点)、HBs抗原陽性あるいは既往感染歴があり、がん化学療法・免疫抑制療法を施行した血液疾患70名の患者より文書による同意を得て、ガイドラインに基づくHBV再活性化対策および再活性化リスク因子の検討を目的とした、血清およびリンパ球保存を行った。核酸アナログ予防投与を行ったHBs抗原陽性7例では安全に化学療法を完遂可能であり、HBV DNAモニタリングによる対策を行った既往感染63例のうち、5例よりHBV DNA量の上昇(再活性化)を認めたが、全例が肝障害を発症せずに、予定通り化学療法を完遂した。また、共同研究として、成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)に対する、抗CCR4モノクローナル抗体であるモガムリズマブ単剤投与でde novo B型肝炎が発症することを初めて報告した。保存血清を用いた解析により、肝炎発症に先行してHBV-DNA上昇が認められること(10週間前)、プレコア変異を有し、1ヶ月間で2.9 log コピー/mLの上昇(ウイルス複製亢進)していたことを示した。来年度は、保存検体を用いたHBV-specific CTL assayの検討を行い、再活性化メカニズムの解明およびハイリスク例の絞り込みを検討する。また、リツキシマブ以外の分子標的治療薬である、モガムリズマブやボルテゾミブ投与例におけるHBV再活性化のリスクを明らかにすることを目標とする。
2: おおむね順調に進展している
HBs抗原陽性およびHBV既往感染歴のある血液疾患症例の集積(説明同意取得)は順調であるが、化学療法前、化学療法中、およびフォローアップのシリーズで検体保存し、かつHBV再活性化イベントを確認できている症例は限られている。また、化学療法前後の保存検体を用いた、HBV-specific CTL assayの確立が重要な課題である。
HBV再活性化リスク因子を有する症例集積は順調に進行しており、再活性化イベント確認例の増加が期待される。また、フォローアップ期間が延長しているため、化学療法前後のシリーズ検体保存例がさらなら増加が期待できる。新規分子標的治療薬の導入により、HBV再活性化リスクが大きく変化する可能性があり、そのメカニズムの解明は効率的かつ革新的な再活性化対策の確立につながる。
保存検体のHBV関連マーカーである、HBs抗原、超高感度HBs抗原、HBc抗体、HBs抗体およびHBV-DNA定量検査の測定キットを購入する予定である。また、HBV-specific CTL assay関連キットを購入する予定である。
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