研究課題
がん化学療法後のB型肝炎ウイルス(HBV)再活性化は、HBs抗原陽性例だけでなく、HBV既往感染例からも起こることが判明しており、とくにリツキシマブ併用化学療法がリスク因子であることが報告されてきた。HBs抗原陽性あるいはHBV既往感染歴(HBs抗原陰性例のうち、anti-HBc陽性and/or anti-HBs陽性)があり、当院にて2012年6月から2014年4月までにがん化学療法・免疫抑制療法を施行した血液疾患102名の患者より文書による同意を得て、HBV再活性化のリスク因子の検討を目的とした、血清およびリンパ球保存を行った。また、核酸アナログ予防投与を行ったHBs抗原陽性3例では安全に化学療法を完遂可能であり、HBV DNAモニタリングによる対策を行った既往感染96例のうち、14例よりHBV DNA量の上昇(再活性化)を認めたが、全例が肝障害を発症せずに、予定通り化学療法を完遂した。また、2005年から2013年までに当院で診療した成人T細胞白血病リンパ腫において、HBV既往感染率(52.4%、33/63)が高く、HBV再活性化割合は11.5%(3/26)であることを明らかにした。また、2005年~2013年までに当院にて造血幹細胞移植を施行したHBV既往感染例29例中8例(27.6%)においてHBV再活性化を認め、移植から再活性化までの期間中央値は375日(範囲、113-1382)、そのピークHBV DNAレベルの中央値は3.3 logコピー/mL (範囲、<2.1-8.6)であることを明らかにした。再活性化8例中7例は肝炎を発症しなかったが、1例は劇症肝炎で死亡した(HBV DNAモニタリング未施行例であった)。
3: やや遅れている
HBs抗原陽性およびHBV既往感染歴を有する血液疾患症例の集積(説明同意取得)は順調であり、抗ウイルス薬予防投与およびHBV DNAモニタリングによるpreemptive antiviral therapyによる対策の有用性は前方視的に検証できている。一方、既往感染例における、HBV再活性化イベントが約10%程度であり、ベースラインおよび再活性化時の検体保存ができている症例が限られていて、免疫学的検討を行うにあたりサンプルサイズが少ないのが課題である。
HBV再活性化リスク因子を有する症例集積は順調に進行しており、今後は再活性化イベント確認例の増加が期待できる。フォローアップ期間の延長により、化学療法前後のシリーズ検体保存例のさらなる増加が期待できる。新規分子標的治療薬の導入により、HBV再活性化リスクが大きく変化する可能性があり、そのメカニズムの解明は効率的かつ革新的な再活性化対策の確立につながる。
HBV再活性化症例における、ベースライン、再活性化時のシリーズ検体保存例の収集が進まず、CTLassayを含めた基礎的検討を進めることができなかった。レトロスペクティブに収集した検体のウイルス学的検討や宿主側免疫応答の基礎的検討を予定しており、HBV血清マーカーやgenome sequenceおよびCTLassay系に使用する予定である。
すべて 2014 2013
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